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遊園地の木馬
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遊園地の木馬

池内紀(著者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 みすず書房/
発売年月日 1998/01/09
JAN 9784622046509

遊園地の木馬

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2024/01/30

『九時間かけて一枚仕上げる。ちっともうまくならないが、せっせと励んでいる。絵の勉強以上に精神の健康法にいい。電車のつり革につかまっていて、想像のなかで景色をつくる。大都市の屋根の並びを取り払い、畳々とつづく山並みに換える。雲を走らせ、雨を降らせる。 気分しだいで「光あれ!」であっ...

『九時間かけて一枚仕上げる。ちっともうまくならないが、せっせと励んでいる。絵の勉強以上に精神の健康法にいい。電車のつり革につかまっていて、想像のなかで景色をつくる。大都市の屋根の並びを取り払い、畳々とつづく山並みに換える。雲を走らせ、雨を降らせる。 気分しだいで「光あれ!」であって、光と影の交錯する空間をつくることができる。山峡に一筋の道を通して、西陽のなかに人を佇ませてもいい』―『夢の風景画/がんぽんち』 過去形がほとんど無い文章が啖呵を切るように続いてゆく。それをぶっきらぼうと受け止めることもできるけれど、二世代程上の人の話と思えば黙って聞ける。そうしていると、折々妙に沁み入るような話が聴ける。そんな風に人の話を聞く術を身に着けたのは社会人生活の中で「のみニュケーション」が大切だとまだ言われていた時代を過ごした時の癖のようなものか。そんな有無を言わさぬ雰囲気のある午後五時以降の活動も、今や我慢を強いる「ハラスメント」と受け止められかねないが、そうして覚えた知恵のようなものが役に立たないこともない。まあ、でも今時の若い人に読んでみろと勧めても、すんなり受け容れられるような気はしないけれど。 かつての理系少年にとって「池内」というと「了」なのだが(学生時代、教わったことはないが、すれ違ったこと位ならあった、かも知れない)、どうして物理の先生がドイツ文学にも手を染めているのかと、勘違いしていたのが「紀」の方だ。恥を忍んで言うのだが、そんな勘違いをしていた人も自分だけではないのでは? お二人のエッセイも時々どちらがどちらかあやふやなまま読んでいたりもする。そんなことはありませんか? 当然、知っている人は知っているだろうけれど、「紀」氏は「了」氏の四歳程上の兄上なので名前が読み難いところも似ているし、エッセイの雰囲気も似ている。独文学者と物理学者の違いはあれども。 書棚には、池内紀訳のカフカ全集が並んでいる位なので個人的にも、そして各紙の訃報でも取り上げられていたように世間的にも、池内紀と言えばもちろんカフカなのだけれど、エッセイの中で漂う快刀乱麻的物言いは随分とカフカの雰囲気とは違っている。翻訳者だからといって翻訳する作家の雰囲気と似ていなくても当然といえば当然なのだけれど、例えばポール・オースターと柴田さんとか、ジョディ・バドニッツやミランダ・ジュライと岸本さんとか、はたまたレイモンド・カーヴァーと村上春樹とか、何となく固有の波長が共鳴し合っているように見える場合も多いので、やっぱり意外な感じがする。逆に「ゾマーさんのこと」のパトリック・ジュースキントは、翻訳者の雰囲気に近いのかなと思ったり。 『錯覚されるようだが、過去と現在と未来とは同一線上にはないのである。少なくとも同じ次元にはない。三者はまったく別のものだ。現在は過去とも未来とも、本質的に何らかかわりがない。過去は深遠で意味深いとしても、現在は浅薄で、しばしば無意味である。未来に美しい設計図は引けるかもしれないが、現在にはそのカケラすらない。多くの経験をつんだからといって、ちっとも聡明にならないのは、世の老人を見ればわかる。未来の夢が人を美しくしないのは、巷の青年や子女の生態からもあきらかだ』―『毎日が日曜日/パソコン』 未来は現在の延長線上にある訳ではない。そんなことを言いながら、さも人生ケ・セラ・セラだと言わんばかりのことを書いたかと思えば、一歩一歩進まなければ頂きに辿り着けない山登りに精を出したり、過去に仕込んで来た知恵で世の中を喝破したりする(君子豹変す、です)。そこが、また面白い。言ってみれば、かつてちょっと付き合うのが億劫だった会社の上司と飲んでいる内に、いつの間にか大笑いしている、と言ったところか。まあ、繰り返しになるけれど、今時、そんなことを言うのも時代遅れではあるだろうけれども。

Posted by ブクログ

2002/09/06

題名と表紙の写真に惹かれて借りたもの。板壁のこげ茶色の背景に自転車と旧型の乳母車(ベビーカーじゃなくって、乳母車って感じの、あれ)が映ってる写真。それもご本人が撮られたそうです。 日本経済新聞(!)に連載されていたエッセイで、筆者はなんとドイツ語の先生。神戸(神戸外大ってあったっ...

題名と表紙の写真に惹かれて借りたもの。板壁のこげ茶色の背景に自転車と旧型の乳母車(ベビーカーじゃなくって、乳母車って感じの、あれ)が映ってる写真。それもご本人が撮られたそうです。 日本経済新聞(!)に連載されていたエッセイで、筆者はなんとドイツ語の先生。神戸(神戸外大ってあったっけ?神戸大かな)や東大で教えてらしたみたい。有名な方かもしれないですが、知らない(無知>自分) さらっとした読み口で、心地よく読めるのがいい。エッセイはいいよね。

Posted by ブクログ