アトピーはかいて治そう 薬もお金も時間もかけない

福冨雅康(著者)

• 販売会社／発売会社: 講談社/
• 発売年月日: 1998/04/23
• JAN: 9784062091473

商品レビュー

2014/10/19

　ものすごい数の関連書籍があるアトピー性皮膚炎だが、この分野では「精神→身体→社会」という人間一般に関わる問題点の巣窟といえる。論ずべきは当然ながらまず「身体」に関することであり、竹原和彦先生のようにアトピーに関連したビジネスを取り上げているものは「社会」と「身体」についての繋がりを説く。この文脈で言えば本書は「精神」と「身体」をカバーするものと言える。

　単純に人間の自然治癒能力に頼るという論調が免疫疾患に関連したものにはとくに多いが、その前に「アトピー性皮膚炎」というものがそもそも存在するのか否かという疑問がある。「アトピー性」の皮膚病という概念は単純に言えば、原因のはっきりしている皮膚疾患を除いた「その他」に過ぎないということだ。そうすると単純に「こうすれば治る」ということ、あるいは「これが原因である」ということを「アトピー性皮膚炎」全般に当てはめるという事自体に問題があるのではないか。

　「かゆいこと」自体は「病気」なのだろうか。頭をポリポリ掻いたり、お尻をポリポリ掻いたりすることは異常なことではないだろう。それが過剰になり、そうした行為の結果炎症が起こり皮膚に損傷が起こると疾患あるいは怪我として認められ、さらにその部位から雑菌が侵入し感染症ということになればこれは深刻な事態となる。もしこの一連の過程をすべて病気としてしまうのならば、物を食べてお腹を壊したときには「物を食べる」事自体も病気となってしまうのではないか。

　風邪の症状が一度収まってもまた罹ってしまう。それは一週間後ということもあるし来年のシーズンかもしれない。風邪という病はその人が生まれつき持っている慢性疾患なのだろうか。こうした視点は東洋医学に言う未病の考え方へとつながる発想である。アトピー性皮膚炎、あるいは医療だけに限らない。多くの問題はこうした「限定的なものの観方」から生じているように思う。