古代ローマ帝国 その支配の実像 岩波新書

吉村忠典(著者)

• 販売会社／発売会社: 岩波書店/
• 発売年月日: 1997/01/20
• JAN: 9784004304821

商品レビュー

2023/08/16

NDC　２３２
「前７０年、帰任したシチリア総督がローマの法廷でその悪政を裁かれた。収賄、脱税、不当な裁判、そして苛酷な課税の下に荒廃してゆく農業、横行する悪徳徴税人、財産を狙われる名望家たち―。総督の強欲を追及する弁論家キケロの弾劾演説を史料に、ローマ統治下にあることの現実を探り、支配の構造を浮き彫りにする。」

「この本を読むことで、ぼくたちはローマ帝国の総監とはどのような存在で、またローマによって支配されるということはいったい何を意味するものなのか、という点について、具体的な事実をもとに理解することができます。また、ローマ帝国では人と人がどのような社会的関係を結んでいたか、ということについても知ることが出来る。」（『世界史読書案内』津野田興一著　の紹介より）

目次
序章　シチリアの悪総督
１　総督は惜しみなく奪う
２　ローマと属州―強大な権力を支えたもの
３　徴税の甘い汁―総督と農事家たち
４　支配者の言説
５　波乱の前７０年

2021/10/19

実態は少数のエリートによる寡頭制。ローマ帝国民といった集団的帰属意識があったとは考えにくい。ローマ市外は戦地と同義。現地任せで多数の役人を派遣して管理する能力なし

2017/01/24

「古代ローマ帝国」という大仰な表題だが、通史的書ではない。本書は、ＢＣ.７０年頃にシチリアを支配した総督(属州大統領)ウェレスの悪行？を元老院裁判にて弾劾したキケロ演説を詳細分析し、元老院・護民官の役割、十分の一税に代表される徴税制度とその具体的徴収法等、総督の民衆支配の内容や共和政末期の属州統治の在り様、主権概念を持たぬ都市国家間の関係、海賊討伐の実態等、ローマン・エンパイアの実像を明らかにしようとする。徴税請負人の選抜、税徴収の駆け引き、農民・名望家との関係(賄賂)等生々しい事実が適示され、判り易い。
この生々しい人としての息遣いが、西洋史(特に古代史)に疎く、また、皇帝ら権力者の顕彰に陥りがちな教科書的な世界政治史の薄っぺらさに辟易している読者(＝私)の不満を大いに解消してくれる。◇１９９７年刊行。著者は横浜国立大学名誉教授。