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バリエーション 集英社文庫
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川西蘭(著者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 集英社/
発売年月日 1998/03/19
JAN 9784087487640

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2012/08/09

私事ですが、結婚してから、彼の小説は読んでいませんでした。よって、スランプに陥ってたり、近年の自転車小説家への転向(?)が、どこでどのように発生してたのか、リアルタイムで追跡できていなかったんですが、90年代後半の、この作品を読んでみる限り、かなり苦しんで書いている印象があるのは...

私事ですが、結婚してから、彼の小説は読んでいませんでした。よって、スランプに陥ってたり、近年の自転車小説家への転向(?)が、どこでどのように発生してたのか、リアルタイムで追跡できていなかったんですが、90年代後半の、この作品を読んでみる限り、かなり苦しんで書いている印象があるのは否めませんね。 作者が意識してのことなら、逆に意図を取りかねるわけですが、そうじゃないと仮定して、まったく同じ表現を何度か繰り返したりしてるのは、たぶん、以前にそう書いたことが記憶上鮮明に残っていないだけのタイムラグを経て、また、手癖としてそういうフレーズが出てしまったということなんじゃないかな?と感じられて、少しいたたまれなくなります。主人公も「書けない」状況になってて、まあ、その原因と言っても良いような状況が、小説として記述される対象となっているわけではありますが、巻末の解説では不評な、そのボツシナリオこそ、むしろ生き生きと筆が踊っているように感じるのがまたイタい。 妖精物語なんて話も書いている彼ですが、基本的には現代劇の作家でありながら、どことなく幻想的な、妖精空間とでも呼べるものが、彼の作品世界には存在しています。どうも、ラストで主人公はそこに陥ってしまったようで、いや、脱出のための策を練っているという記述で終わりますが、どうやら、この時点で、作者としてもここから脱出する具体的なイメージは思い描けずにいたのではないか?と思えてなりません。 ミヤコは、その出会い方からして、デビュー作「春一番が吹くまで」のヒロインをイメージさせますが、あれを読んだ当時、ぼくらを魅了したあのヒロインが、ここではここまで不幸になって、まあ、それは青春の頃と大人である今との間に、バブルとか、そういうものが挟まっている世代の不幸なのかも知れませんが、そんな抗いがたい、個人にとっては天災にも等しいような理由で不幸になったと思えれば気楽に生きられるところを、それは、自分のせいなのだと思い込むなら、これは病んでいくのも無理はないというところかも知れません。 たぶん、こんな話は、他の世代、特に現代の若い人、あるいは、現時点で主人公らと年齢の読者には共感いただけないとも思いますが、作者と同じ時代の空気を吸ってた人間の泣き言みたいなものです。悪しからず。

Posted by ブクログ

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