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狼煙を見よ 戦後ニッポンを読む 戦後ニッポンを読む
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 読売新聞社/ |
発売年月日 | 1997/10/28 |
JAN | 9784643971163 |
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狼煙を見よ
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「死んどるヒマはない」で知った「三菱重工爆破事件」。事件名くらいは聞いたこともあったが、詳しいことはまったく知らなかった。8人の死者を出し、企業をねらった無差別の爆弾テロのように扱われるこの事件は、朝鮮を植民地とし、アジアの他国への侵略戦争をしてきた日本が、十分な責任をとらないば...
「死んどるヒマはない」で知った「三菱重工爆破事件」。事件名くらいは聞いたこともあったが、詳しいことはまったく知らなかった。8人の死者を出し、企業をねらった無差別の爆弾テロのように扱われるこの事件は、朝鮮を植民地とし、アジアの他国への侵略戦争をしてきた日本が、十分な責任をとらないばかりか、戦後も海外へ経済侵略を続け、武器までつくって死の商人となり他国の戦争を助けてさえいることへの憤りの表現であった。 そのことを、たとえば益永スミコさんは、自分たちの世代が、植民地支配や侵略戦争をきちんと反省し、社会が変わっていれば、あの若者たちはこんな事件を起こさなかっただろう、若者たちにすまないと、わが責任として考えたのだった。 「三菱重工爆破事件」と図書館の蔵書を検索したらこの松下竜一の本が出て、借りてきた。これは益永スミコさんと養子縁組した片岡利明さんとともに、事件の主犯とされ、死刑判決を受けた大道寺将司さんのことを書いた本である。 すでに文通をしていた他の政治犯から、獄中は『豆腐屋の四季』ブームですと、自著のブームを聞いていた松下竜一は、ある日大道寺将司から便りを受け取る。 ためらいと迷いの末、松下は大道寺と面会し、それからも逡巡しつつ、取材を始め、大道寺のことを書くことになる。大道寺たちがなぜ武装し、暴力的な方法をとるに至ったのか、"植民地主義侵略企業"の爆破によって訴えようとしたことは何なのか。そのこととともに、大道寺らが、どのような若者であったかが描かれる。 松下は、大道寺ら政治犯との文通を続け、自らが編集発行人のミニコミ「草の根通信」で、かれらの手紙を紹介したこともあった。獄中のかれらのことを考え始めるミニコミ読者を期待してのことである。 だが、松下の予想以上に読者の反発は強かった。たとえかれらが失敗だったと反省しているにしても、ビル爆破で多くの死傷者を出したこと、その加害者の大道寺たちを擁護することが理解できないと松下はつきつけられる。 松下は、釈明のようなものを「草の根通信」で書く。 ▼…何もしない者は、それだけ間違いも起こさぬものです。そして多くの者は、不正に気付いても気付かぬふりをして、何も事を起こそうとせぬものです。東アジア反日武装戦線の彼等は、いわば「時代の背負う苦しみ」を一身に引受けて事を起こしたのであり、それゆえに多数の命を死傷せしめるというとりかえしのつかぬ間違いを起こしてしまったということです。その間違いだけを責め立てて、何もしないわれわれが彼等を指弾することができるでしょうか。極悪犯として絶縁できるでしょうか。…(p.180) 爆破事件の傷の後遺症に苦しむ人たち、わけても8人の死者たちの存在は、「それでも…」と多くの人を思わせるだろう。誠実であったからこそ彼等は事件まで起こしてしまったのだという松下の言葉も分かるけれど「でも…」と私も考えてしまう。 松下はこうも書く。「死者にこだわり続けるという一見誠実な立場というのは、実は一切の思考回路を閉ざすことではないのかと思えてならないのだ。」(p.182) 「安全な日本にいて「ベトナム反戦」を千回叫んでも何の力にもならない。現実にベトナムの米軍を助ける働きをしている国内企業に爆弾を仕掛けることこそが真の連帯だという考えを、私は否定できないのです。」(p.179)とも書く。 時代、そして世代の遠さのせいかもしれないが、武装に至った若者たちの真っ直ぐさに、私はついていけないものを感じる。といって、かれらを責め立て、裁こうとする「力」の側の言動にうなづけるわけでもない。 かれらが闘いに立つ決意として表明している内容のひとつめはこうだった。 ▼1 日帝は、36年間に及ぶ朝鮮の侵略、植民地支配を始めとして、台湾、中国大陸、東南アジア等も侵略、支配し、「国内」植民地として、アイヌ・モシリ、沖縄を同化し、吸収してきた。われわれはその日本帝国主義者の子孫であり、敗戦後開始された日帝の新植民地主義侵略、支配を、許容、黙認し、旧日本帝国主義者の官僚群、資本家共を再び生き返らせた帝国主義本国人である。これは厳然たる事実であり、すべての問題はこの確認より始めなくてはならない。(p.36) 許容、黙認しないならば、自分には何ができるのだろうと思う。暴力的な手段にうったえないならば、どんな方法があるだろうかと考える。
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