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若い読者のための短編小説案内
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 文藝春秋 |
発売年月日 | 1997/10/08 |
JAN | 9784163533209 |
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商品レビュー
3.4
15件のお客様レビュー
戦後の第三の新人たちの短編をピックアップし、解説する。なかなか馴染みのなかった作家ばかりだったが、小島信夫は気になった。読んでみたい。
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アメリカの大学の講義を元にしたもの。取り上げている作品もすくないが、ここで見るべきは作者の考え方だと思う。全部は読まなかった。
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一流の作家は、批評をやらせても一流なんだな、というのが読後の第一の感想です。 本書(1997年刊)は、村上春樹が吉行淳之介や安岡章太郎ら主に「第三の新人」と呼ばれる作家群の短編小説を6編取り上げ、ガイドする趣向(「評論」ではないと、本人は断っています)。 私は、春樹本は恐らく半分...
一流の作家は、批評をやらせても一流なんだな、というのが読後の第一の感想です。 本書(1997年刊)は、村上春樹が吉行淳之介や安岡章太郎ら主に「第三の新人」と呼ばれる作家群の短編小説を6編取り上げ、ガイドする趣向(「評論」ではないと、本人は断っています)。 私は、春樹本は恐らく半分くらいしか読んでいませんが、自分のような半端な春樹ファンには「え? 春樹って日本の小説も読むの?」と驚かれる方もいるかもしれません。 読むんですね。 ただし、自然主義的な小説や私小説は苦手のようで、本書では「太宰治も駄目、三島由紀夫も駄目でした」と告白しています。 言われなくても分かります笑。 第三の新人は、確かに春樹好みかもしれません(あ、私は小島信夫と吉行淳之介くらいしか読んでません、すみません)。 悪く言えば小さくまとまっていますが、身の回りの日常に視点を定めた作風は、政治や社会をテーマにした、いわば「大きな物語」を忌避してきた春樹を惹きつけるものがあるのでしょう。 本書で取り上げているのは、いずれも春樹が好きだという以下の作品。 ・吉行淳之介「水の畔り」 ・小島信夫「馬」 ・安岡章太郎「ガラスの靴」 ・庄野潤三「静物」 ・丸谷才一「樹影譚」 ・長谷川四郎「阿久正の話」 それにしても、散々批評され尽くしてきたであろう第三の新人のこれらの作品ですが、春樹がやると、やっぱり春樹ならでは、というか、恐らく本書のように論じた例はこれまでなかったでしょう。 吉行淳之介は「短編の名手」と言われますが、春樹は「むしろこの人の文章は下手なんじゃないか」と断言したうえで、「彼の書く文章は、文章的には意外なくらいごつごつしているんです。この人は決してみんなが考えているような繊細な文章的スタイリストではないだろうと僕は思うんです。逆に吉行さんの小説の面白さは、本当はそういうごつごつした不器用な、非スタイリスト的な部分にあるのではあるまいかと。」と述べます。 こんなこと、春樹を含め何人かくらいしか言えないわなぁ。 小島信夫の「馬」は私も大好きな作品ですが、主人公の妻・トキ子の言動について春樹は、次のように分析しています。 「homeという中身よりはむしろhouseという入れ物そのものの概念の中に、人間関係のより大きな、より深い可能性を見ているようでもあります。homeという想念(アイデア)はここではほとんどまったく取り上げられていない。まるでそんなものは必要ないみたいに見えます。それが僕にはすごく面白く感じられるのです。」 読みが本当に深い…。 各作品を丁寧にガイドしながら、随所の春樹の「作家論」「創作論」とも呼べるものが顔を出すのも興味深い。 うまくデビューして、さあ、これからプロになろうという時に、考えなければいけないことは何か。 「あまり良い表現ではないけれど、作家としての『経営方針』の決定を迫られるわけです。『この部分はもっと拡大して伸ばしていける』『これは一回ならいいけれど、いつもやるのはちょっときつい』というようなことを識別して行かなくてはならない。これはおそらくたいていの作家が、意識的にせよ無意識的にせよ、やっていることだろうと思います。逆に言えば、これがうまくできなければプロにはなれないんじゃないかと。」 そういう立場にある人には、とても参考になるのじゃないかしらん。 もっとも、その100ページほど後で、全く異なる文脈ですが、「僕自身は、作家の発言というものは多かれ少なかれみんな嘘だと思っています」と述べています笑。 海外文学に傾倒してきた春樹が、日本文学(のほんの一部ですが)とどう向き合っているのかを知る上でも好著。
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