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世界という背理 小林秀雄と吉本隆明 講談社学術文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 講談社/ |
発売年月日 | 1996/04/10 |
JAN | 9784061592254 |
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世界という背理
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小林秀雄と吉本隆明という二人の批評家の仕事を、現象学に足場を置く著者自身の立場から解釈しています。 小林は、マルクス主義に基づく批評が世の中を席巻するなかで、そもそも人びとがさまざまな「意匠」に捕らわれてしまうのはどうしてなのかを突きつめて考えようとしました。ひとがある意匠に抗...
小林秀雄と吉本隆明という二人の批評家の仕事を、現象学に足場を置く著者自身の立場から解釈しています。 小林は、マルクス主義に基づく批評が世の中を席巻するなかで、そもそも人びとがさまざまな「意匠」に捕らわれてしまうのはどうしてなのかを突きつめて考えようとしました。ひとがある意匠に抗いがたく捉えられてしまうことを小林は「宿命」と呼び、これが思想と呼ばれるものをひとが抱くようになる「根拠」だと考えます。そして、批評と呼ばれる営みは、この根拠を「験す」ために構築されると小林は主張しました。「批評とは竟に己れの夢を懐疑的に語ることではないのか!」という小林のことばは、このことを意味していると著者は解釈します。それゆえ、批評の正しさがわれわれの「宿命」とは独立に決定されており、そのことに基づいてひとが思想をもつようになると考えるのは、転倒した考えだと著者はいいます。 他方吉本は、どんな思想や芸術も「宿命」的な真実としてしか人間の魂に棲みつくことはないという小林の洞察を受け継ぎながらも、それにもかかわらず、それらはある普遍的な根拠をもつはずだと考えました。この普遍的な根拠が、吉本のいう「大衆の原像」だと著者はいいます。ただしこのことは、思想は虐げられた者の立場に立脚すべきだといったような、イデオロギー的な立場の選択を意味しているのではありません。吉本は、戦後になって批評家たちが皇国の理念をいともたやすく投げ捨てるのを見て、もし人間の思想が歴史的な規定を乗り越えることができないのだとしたら、人間が思想をつかんでみずからの情熱とし、そこで生き死にすることは、まったく個人の恣意的な問題になってしまうという難問にとらわれます。そして、社会的な関係についての思想の正しさを検証する根拠は、社会のうちでの人間の具体的な生のあり方だけだと考え、それを「大衆の原像」と呼んだのだと著者は解釈します。ここでも重要なのは、「大衆の原像」に奉仕する思想が「正しい」と考えたのではなく、思想の正しさを検証しうる根拠として「大衆の原像」を発見したという「順序」だと著者はいい、こうした吉本の議論の順序に、客観的な真理の妥当性の根拠を求めたフッサール現象学の発想と通じるものがあると論じています。
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