バラは密かに香る ハヤカワ・ミステリ文庫

デイヴィッド・M.ピアス(著者), 佐藤耕士(訳者)

• 販売会社／発売会社: 早川書房/
• 発売年月日: 1996/06/30
• JAN: 9784150796525

商品レビュー

2020/09/23

カリフォルニアの私立探偵は見てくれよりは軽やかでさっぱりしている。
さり気なく周りに散らばる人物が、ちらつく木漏れ日みたいに小さくそれぞれ光ってる。
どうってことのない、これも軽やかな展開だが、美しいレトリーバーの弔い合戦なのだ。
展開の読みにくさは秀逸。
終わりに飛びたくなるたいぷではある。
我慢せよ。

2008/12/31

友人の写真屋の愛犬を殺した犯人を捜す探偵の活躍譚。
ハードボイルドっぽく始まったかと思えば、いきなりお間抜けな姿を読者に披露する主人公。話のペースはずっとそのまんまで進んでいく。
ハードな部分と軽妙洒脱な部分が微妙に配分されている。この塩梅はキライじゃない。
そして主人公も本筋の仕事以外にこまごまとした探偵仕事をこなしたり、彼女とデートをしたり、となんだか人間臭さ満載。
脇にある一つ一つのケースを細かく追ってくれる訳ではないので散漫な印象も受けるのだけど、主人公のキャラ故にま、いいかと思わされてしまう。
前へ前へと進ませるパワーがすごい。
また脇を固めるキャラも個性的で、なんとも楽しい。個人的にはパートタイム・アシスタントのサラと”ポルノ王”の名を持つ人物が気に入った。
残念なのは最後までこのパワーで突き進んでくれなかったこと。
事件の解決が回顧談って言うのが肩透かしを食った感じで…。本文の調子で書いてしまうと倍の厚さになりかねないって言うのは分かるんだけど、せっかくのキャラたちを活躍させて欲しかった！
しかし、ユーモアものとしては十分に楽しめた。