美味礼賛

ブリアサヴァラン(著者), 関根秀雄(訳者)

• 販売会社／発売会社: 白水社
• 発売年月日: 1996/06/25
• JAN: 9784560045930

商品レビュー

2009/11/01

【091101】粋は身を食う

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学生街にある小さな映画館でとある監督の二本立てが掛かっていたので観にいく。

インドのスラム出身の青年がクイズ番組で一攫千金を得る話と、
スコットランドでの薬漬けの若者達の無軌道な日常を描いた話。

二本を続けたあとに喫茶店に入り、洋酒に漬けられてじゅくじゅくしたカステラ菓子をフォークで突付きながら話す。
時代が異なる同じ監督の作品を比較して観ることによる発見について。

それぞれに象徴的なシーンがあるね。
トイレに閉じ込められたスラムの少年がスーパースターのサインをもらうために肥壷に意を決して飛び込むシーン。
そして、便器の中に薬を落とした若者が頭から便器のなかに潜り込んでいく幻想的なシーン。

なんとかいうカステラ菓子は皿の上でぐちゅあぐちゅあになりつつある。

フランス革命前、ブルジョワのなんとかいう人が食の快楽について語っていてあらゆる人々に共通と言っていたが、本当にそうだろうか。
映画を観ていて思ったよ。
スラムの少年達やスコットランドの低所得者層の人々に食の快楽などあったのだろうかと。

皿からは洋酒の香りが立ち上り鼻を突く。

しかし、あれだ。
排泄の快楽は誰しも共通だと思えた。
これからは誰しも逃れることができないのだなと。

カステラ菓子の成れの果てをフォークで口へと運ぶ。

なんとかいうフランス人の著作には、「超絶的ガストロノミーの随想」という副題がついているんだ。
だけど映画を観て思ったね。
これらの作品の根幹は、「超絶的スカトロノミーの随想」にあるなと。

唇についた洋酒を舌で拭った。

2007/03/01

以前、持っていたんですけど、何処かにやってしまったか、古本屋にはらってしまったのか、手元に無いので改めて読みたくなった。

2006/12/26

美文と美味しい食餌はとても似て、美味しい食事について書かれた美文ともなれば相乗効果で脳みそが溶け出しそうです。
感動の余り夕飯に鴨を食べようかとすら思った一節はこれ。
『経験は多数の観察をもとにして、食餌は夢を規定する、と教える。
一般に軽度の刺激性食物はすべて夢を見させる。たとえば黒い肉類、鳩の肉、鴨の肉、猟鳥獣肉、ことに兎肉は夢を見させる。
それからアスパラガス、セロリ、トリュッフ、におい特にヴァニラの香りをつけた砂糖菓子も夢も見させる。』
　……うっとりする美しさだと思いませんか。ジビエが夢を見せる、その食餌の効能を著者は否定しません。それは悪夢ではなく、『概して軽い愉快なもの』であるからです。逆に、静かに眠りを誘う食物としては
『たとえば牛乳が主になっている食物、ちさ類のすべて、飼鳥肉、まつばぼたん、オレンジの花。そしてレーネットという林檎を、就寝直前に食べるとよい。』
　……まつばぼたんは小さな黄色い花が咲くものをサラダにするそうです。美しい。素晴らしい。ちさ類、は注釈がないからよくわからないけど、多分「萵苣」でレタスのことでしょう。