第三の波の政治 新しい文明をめざして

アルビン・トフラー(著者), ハイジトフラー(著者), 徳山二郎(訳者)

• 販売会社／発売会社: 中央公論社/
• 発売年月日: 1995/07/07
• JAN: 9784120024641

商品レビュー

2024/05/31

1995年の古い本。そこ時点から、未来を洞察した本である。技術の進歩とそれに伴う社会変革が、どのように政治に影響を与えるか。
成田悠輔氏の『22世紀の民主主義』の昭和版といっても良いだろうか。

著者トフラーは、情報技術の発展により、従来の政治システムでは時代遅れになると主張した。権力が大規模な政府や企業から個人や小規模な組織にシフトし、かつ、グローバルな課題に対処するための新しい国際協力の形態や、国家間の関係が変化すると予想した。前者においては、情報技術を活用した市民参加の促進を考えていたのだ。

95年は、インターネットが民間に普及し始めた黎明期と言っても良いだろうか。政治に大きな影響があるという事だが、そう考えたのはトフラーに限らず、自然なことだと思う。90年代は、amazonが設立され、２ちゃねるが立ち上がった時期だ。インターネットによる社会的影響が無視できないと主張した所で、斬新な気はしない。しかし、それが政治システムにまで変化を齎したかというと、評価は微妙な所だろう。世論形成には、SNSが影響している。炎上やキャンセルカルチャー、ポリコレ、YouTubeなどの文化を齎した。しかし、未だに、大部分の選挙の仕組みはアナログのままだ。

グローバル化についても、ネットにより国境がなくなるような期待もあったが、結局のところ、モノの売り買いや市民層での娯楽の共有などのグローバル化は進展したが、ナショナリズムや地政学的な価値観は、これも変化せず。寧ろ、民族や集団の根幹的な部分は覆らず、ネットはある種の真実を炙り出したり、全くのウソで扇情する事により、新たな分断を齎したとも言える。

トフラーの予想が現実化していないのは、人類の選択の結果でもある。これは、成田悠輔氏の予想図の限界にも通底するものがあるような気がする。デジタルプラットフォームやビッグデータ、AIの活用を通じて、効率的かつ参加型の政治経済システムが成立し得るのか、成立すべきなのか。衆愚制のような現象も考えると、人類には予め想定する最適解はなく、偶発的に生きていく事で最適解を後付けで認知しているだけにも思えてしまう。

小難しいが、それなりに楽しみ方のある本だった。

2006/03/20

著者のアルビン・トフラーは「未来学者」というさっぱりわからない肩書きなのですが、それはそれはすごい本でして、93年ぐらいに僕はこの本を読み終わった直後震えがくるほど興奮し、そのままの勢いでコンピューター業界に飛び込み、今日を迎えております。今の僕があるのはあの本のおかげと心から思っております。僕以外にも今
日ネット業界に身を置く人の中にはこの本を読んだのがきっかけという人も多いかと思います。

その「第三の波」を改めて読もうと思ったら、なんと絶版で売ってないんですよ。これ、ショックですよ。こういう本を絶版にしてはいけません。後世に伝えるべき本です。NANAが売れるのも結構。でも、これ絶版はまずいです。中公文庫なにやってるんだといいたい。

2006/02/06

アメリカ人的な（？）楽観的未来予想ですが、現在を見回してみると結構あたってます。例えば、流通事情に変化が起こり倉庫がなくなること、これは現在のオンデマンドな販売形態そのもの。