エルベの魔弾

梅本弘(著者)

• 販売会社／発売会社: 徳間書店/
• 発売年月日: 1995/02/28
• JAN: 9784198602406

商品レビュー

2013/08/31

第二次大戦末期、ドイツの首都ベルリンを舞台にした戦争フィクション小説。この時代に生きた一人の日本人少年の視点を通して描かれるベルリン陥落という歴史的悲劇の中、ドイツＩＶ号戦車の車体に試作砲塔を乗せた改造型に始まり、赤外線暗視装置付きのパンターＤ型等、架空戦記顔負けのドイツ超兵器が登場し主人公達に勝るとも劣らない大活躍を魅せる。しかし、内包されるテーマは架空戦記のような「歴史の流れを変える事」にはない。御都合主義に走らず、戦車という兵器の持つ威力と、戦争世言う時代の流れの中で奔走する人々の姿は切なく、そして力強い。物事の限界や制約をきちんと描くところは作者の歴史や兵器に対する客観的な目と深い愛が感じられる。フィクションの中に見える「リアル」を感じさせてくれる作品。

2012/11/10

個人にとって戦争がどうかかわってくるのかが伝わる作品。その戦争の善悪は国家レベルでは存在するのであろうが、戦闘員やその地の人々にとっての行動基準はまたそれとは別に存在する。圧倒的な敗色のなかで、いかに生きいかに死すか、それは善悪や損得の彼岸にある。友人関係や、出会った人の魅力、一時の気まぐれやめぐり合わせ。大きな時間の渦の中で翻弄されつつも必死に人間であり続ける姿のいとおしさを感じます。