- 中古
- 書籍
- 書籍
神道学者・折口信夫とキリスト教
定価 ¥3,524
1,650円 定価より1,874円(53%)おトク
獲得ポイント15P
在庫なし
発送時期 1~5日以内に発送
商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 聖学院大学出版会/ |
発売年月日 | 1995/01/30 |
JAN | 9784915832109 |
- 書籍
- 書籍
神道学者・折口信夫とキリスト教
商品が入荷した店舗:0店
店頭で購入可能な商品の入荷情報となります
ご来店の際には売り切れの場合もございます
お客様宅への発送や電話でのお取り置き・お取り寄せは行っておりません
神道学者・折口信夫とキリスト教
¥1,650
在庫なし
商品レビュー
4
1件のお客様レビュー
個人的信仰を重んじるキリスト教に対し て、一般的な神道論者によると、神道は、日本の生活に根ざしたもので、宗教とはい えない習俗であり、日本国家という民族共同体と天皇信仰を前提としてのみ成り立つ 宗教である 。彼我の差は絶望的に大きいものであるが、この溝を埋める可能性を持 ...
個人的信仰を重んじるキリスト教に対し て、一般的な神道論者によると、神道は、日本の生活に根ざしたもので、宗教とはい えない習俗であり、日本国家という民族共同体と天皇信仰を前提としてのみ成り立つ 宗教である 。彼我の差は絶望的に大きいものであるが、この溝を埋める可能性を持 つ人物がいる。神道人でありながら、神道の根幹である日本の民族性と天皇信仰を切 り離し普遍宗教とすることをめざした、戦後しばらくまで活躍した国学者の折口信夫 である 。 著者は折口の戦後神道論を以下の諸点に要約する。?世界宗教化、?経典の整 備、?教会の形成、?教祖の出現、?教義の確立、である。これは宗教学者岸本英夫 の宗教分類によれば、結果的には自然宗教から創唱宗教への変化を折口がめざしてい たことになるという 。 これに対して、神道本流の懐疑は、折口の議論は「神道指令」に象徴される占領軍の意向に迎合したものではないか、というものであった。しかし著者は、先にも触れたような折口のキリスト教との接触の大きさを強調している。そしてこのような折口の方向性に、それとは逆に日本の国家主義に迎合していったキリスト教が学ぶべきものがあるのではないか、と問うているぐらいである 。 しかしこのように画期的な戦後神道論にも課題は残っている。戦後神道論の最大の眼目 は「深められた神道宗教によって日本を再生する」ということであったが、折口のこ の提言が受け入れられたとして、果たして戦後神道論は現実化したのだろうか、と著者は問う 。 まず、「教祖」が必要であると言うが、天皇がいる限りそれは現実には不可能ではな いか、ということである。元来神道的情熱とは、折口が考えた構造の改革とは別のも のではないか、折口にとって本当の神道宗教とは、教典・教祖・教義などとは直接関係 のない「(前)古代」にあるのではないか、古代の生活を明らかにし、その伝統の中 に現在の生活を位置づけるということが本来の折口の志向ではないか、という問いで ある。若者の宗教離れは民族の変遷と深く関わっているため、教義や教典をもってき てもこの意味での宗教的情熱を回復するのは恐らく無理だろう、という疑念にもつな がる。また,戦後神道論の大きな目的は、「人間宣言」によって人間になった天皇を 守るものでもある。 著者はこれらを受け、戦後神道論は結局は「幻影の古代」への復帰でしかなく、天 皇制そのものを廃棄してはじめて、神道はすべての人類のものとなり得る可能性を持 ち、そこに戦後神道論の持つ限界を見る 。 さらに決定的な問題として、普遍的に当てはまる人間論がないことを指摘す る。普遍的な人間論はそもそも神道にはないし、折口にも戦後神道論にもないのであ る 。神道では人間の発生どころか日本人の発生さえも定かではなく、人間論らしき ものがあっても、それはただ日本人だけに妥当する人間論である 。人間論の欠落 が、戦後神道論によっても結局は普遍的な「人類教」を生み出すことのできない決定 的な要因なのである。戦後神道論は、結局は日本という大枠を崩すものではなく、そ の内部だけでキリスト教的構造を模して改革を試みたものであった 。著者は以下 のように結論付ける。 「『神の敗北』あるいは『神やぶれたまふ』という認識がいかに痛烈を極めようと、そ れが『敗北』の次元にとどまるかぎり、神の全面的な否定、つまり神の死を意味しな い。神の死、換言すれば、日本文化の価値体系の全称否定ということがないかぎり、 その真の意味の再生、つまりまったく新しい価値の誕生はありえまい。『神の敗北』 という認識に後続するものは、せいぜい神の再起でしかありえないのではなかろう か。」
Posted by