源氏物語 愛の渇き ワニの選書

大塚ひかり(著者)

• 販売会社／発売会社: ベストセラーズ/
• 発売年月日: 1994/02/05
• JAN: 9784584191064

商品レビュー

2023/09/18

源氏物語の女性たちをさらに深く見つめられるようになった。
忘れられない1冊になりそう。

物語の描かれたのは平安末期。
仏教や儒教の思想が浸透し家族制度に大きな変化が起きた時代を反映した物語という視点も新たな視点を与えてくれてまた源氏を読むのが楽しみになった。

2007/06/15

(2007.04.12読了)(2005.08.26購入)
2年前に大塚さんの｢義経物語｣を読んで、分かりやすくて面白い、小気味のいい筆捌きに非常に感心して、著作を何冊か買い集めました。源氏物語に関するものが多いので、｢新源氏物語｣と並行して読むことにしました。
｢コーラン｣を読んだ時も、解説書と並行して読みましたが、今回も同じように読み進めようと思います。

あとがきに、この本を書くに当たって心がけたことが述べてあります。
・｢源氏｣ってこんなに面白いってことを紹介する。
・｢源氏｣の女達はなぜ耐えるのか。
・なぜ光源氏はむなしいのか。
・なぜ紫式部はこんな物語を書いたのか。
このような疑問を、社会的･個人的･歴史的事情にスポットを当てて考えてみよう。
｢源氏｣以外の古典と比較しながら、こうした背景をできる限り考えてみよう。
ということです。
構成は、｢第一部、光源氏の愛と性｣｢第二部、宇治十帖の愛と性｣となっていますので、源氏物語、54帖、全般にわたって考察していることが分かります。

●著者の結論(283頁)
｢源氏｣というのは、王朝文化の集大成と言われながら、｢源氏｣は、｢源氏｣以前の古典と｢源氏｣以後の古典を分ける｢ターニングポイントの文学｣であることを痛感したのです。つまり、母系社会から父系社会へのターニングポイントです。
●｢源氏物語｣とは(1頁)
光源氏という男を中心とした女達の｢生きる苦しみ｣を描いたもの。
葵の上や六条御息所は、光源氏に愛されないため、嫉妬や恨みを募らせていくし、身分違いの明石の君は、一家離散の苦しみを味わうことになる。愛妻の紫の上でさえ｢夫の愛がさめないうちに、出家してしまいたい｣と愛の不信に苦しんでいる。

著者は、本編の中で、光源氏と登場人物の女性たちの関係を時代背景や、紫式部のおかれた立場などを考察しながら小気味よく、解説してくれます。
源氏物語を読まなくても、この本を読むだけで、どのような登場人物がいて、どのようなことが展開するのか分かりますし、源氏物語を読んだ人は、読んでいる時には気がつかなかったことや読んだことの再確認にもなります。
比較のために、｢宇津保物語｣｢栄花物語｣が出てきますので、それもいずれ読まないと、などというのは、また積読が増えてしまいそうです。

☆関連図書(既読)
『大塚ひかりの義経物語』大塚ひかり著、角川ソフィア文庫、2004.09.25
「絵草紙源氏物語」田辺聖子著・岡田嘉夫絵、角川文庫、1984.01.10
「新源氏物語(上)」田辺聖子著、新潮文庫、1984.05.25

著者　大塚　ひかり
1961年　神奈川横浜市生まれ
早稲田大学第一文学部(日本史学専攻)卒業
出版社勤務を経て、古典的専業主婦に
古典エッセイスト
(2007年4月29日･記)

（「MARC」データベースより）amazon
「源氏物語」の女達はなぜ耐えるのか。なぜ光源氏はむなしいのか。愛しても、愛されても、満たされない。1000年前に「今のあなた」がいる。現代人にも受け入れられる「源氏物語」の愛と性、男と女のあり方に迫る。