鞭打ちの文化史 中田耕治コレクション5

中田耕治(著者)

• 販売会社／発売会社: 青弓社/
• 発売年月日: 1994/09/29
• JAN: 9784787230898

商品レビュー

2009/10/24

【091025】背に腹は代えられぬ

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昨今、イスラム法に基づく一見不条理とも取れる刑罰の執行に関するニュースを耳にする機会が増えている。
例えば次のようなものだ。

★ソマリアの反政府組織で国際テロ組織アルカイダとの関連が指摘されるイスラム根本主義過激派集団「アル・シャハブ」は最近、ブラジャーを着用していたと思われる女性を集め、公開で鞭打ち刑を執行した。【ロイター 10/16】
★マレーシアのイスラム法廷は、ビールを飲んだ飲酒の罪でイスラム法により鞭打ち刑を言い渡し、その後、刑の執行を延期していた女性モデルのカルティカ・サリ・デウィ・スカルノ氏に対する刑の執行を命じた。【AFP 9/28】
★マレーシアの首都クアラルンプール近郊のイスラム法廷は18日までに、結婚していないのに性交渉を持とうとした罪で、イスラム教徒のカップルに対しそれぞれ罰金5,000リンギット（約13万円）と鞭打ち6回の判決を言い渡した。【共同 9/21】

マレーシアのように、刑務所が満員状態であるため、窃盗などの犯罪については刑務所へ入れずに鞭打ち刑を課す様に法改正が行われたことで執行件数は増加しているといった社会的事情もある。
一方で、ソマリアの件などはイスラム法に名を借りた反政府組織下っ端兵士の横暴のようにもとれる。

ところで、
報道でそれは「鞭」と訳されているが、にしおかすみこが手にするペラペラしたおもちゃのような鞭ではなく細い籐を束ねた棒のようなものだ。
これで主に臀部を打つ。
Webで動画が公開されて一時世界的に問題にもなったことがあるのでご覧になった向きもあるかもしれない。
1回で肉が裂ける。6回も打たれたら血だらけで気絶しかねない。

古来、鞭打ちは石打ちと並び淫行の罪人に対する死刑の手段とされたことからも解るように危険行為である。

尻を打つことと背中を打つことでは、背中が危険であり、
背中を打つことと腹を打つことでは、言うまでもなく腹が危険である。
指を強く鞭打てば骨折の危険をともない、
巻き込めば遠心力により先端の破壊力は増す。

こんなことは常識であった。

刑罰としての鞭打ちを別とすれば、それはむしろ対話、すなわち修道士が自らを鞭打つ行為による神との対話にその意は近しかったはずである。
与えられる痛みに耐え受け入れることを歓びとし、また、与えた痛みを受け入れる存在を得たことを歓びとする。

しかしながら、
近時、それも変わりつつあるようだ。
Webで公開される動画にはドラマはなく、鞭を揮い、笑み、鞭打たれ、涙し、叫び、血を滲ませる、質感の無い事実のみがある。
そこには、揮う鞭から手に伝わる重みもなく、鞭打たれる者の肌の温もりもない。

★ソマリアの反政府組織で ～ 公開で鞭打ち刑を執行した。その後、女性たちはブラジャーを外して胸を揺らすよう命じられたという。【ロイター 10/16】

それでは、ソマリアの馬鹿どもと変わりない。