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4.5

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2021/12/23

今は亡き作者を偲ぶ。 異文化に戸惑い、身に付けた西欧文学の素養は、稚拙な日本人のそれではない。 堂々とした佇まいと流麗な言葉を併せ持つイタリアの知識人そのものだ。 伴侶の回想。友人との邂逅。古の街並みと触れ合った人々との交流が彼女の奥底に集積していった。 殊更、ヴェネツィアを“...

今は亡き作者を偲ぶ。 異文化に戸惑い、身に付けた西欧文学の素養は、稚拙な日本人のそれではない。 堂々とした佇まいと流麗な言葉を併せ持つイタリアの知識人そのものだ。 伴侶の回想。友人との邂逅。古の街並みと触れ合った人々との交流が彼女の奥底に集積していった。 殊更、ヴェネツィアを“興行中のひとつの大きな演劇空間”と例えたのは圧巻だった。 「近代に到って成長をしなくなり、虚構化をしてしまった。サンマルコ寺院のモザイク、夕陽の潟の漣、囀るように喋る女たち、リアルト橋のうえで澱んだ水を眺める男女。これらは皆、世界劇場の舞台装置なのではないか。」

Posted by ブクログ

2016/02/27

訪れたことも積極的に学んだこともないイタリアなのに、風景が目の前に浮かんでくるような本だった。イタリアの一つ一つの街を、そこに住む人の真の生活に基づいて表現してるのがすごい!ちゃんと人との関わりを持って、イタリアの核みたいなところを描こうとしたんだろうな、、

Posted by ブクログ

2009/11/14

(2003.12.30読了)(2003.11.14購入) 講談社エッセイ賞、女流文学賞受賞 この作品は、須賀敦子さんのデビュー作です。 この作品の基は、1985年12月から1989年6月まで日本オリベッティの広報誌に連載されたものだそうです。オリベッティは、ご存知イタリアの事務...

(2003.12.30読了)(2003.11.14購入) 講談社エッセイ賞、女流文学賞受賞 この作品は、須賀敦子さんのデビュー作です。 この作品の基は、1985年12月から1989年6月まで日本オリベッティの広報誌に連載されたものだそうです。オリベッティは、ご存知イタリアの事務機メーカーです。 「ミラノ 霧の風景」1990年、「コルシア書店の仲間たち」1992年、「ヴェネツィアの宿」1993年、「トリエステの坂道」1995年の4冊が須賀さんの4部作だそうです。 「コルシア書店」から読み始めて、「ヴェネツィア」、「トリエステ」と読んで、最後にデビュー作に戻ってしまった。 読んだ印象としては、「ミラノ」は、他の3作品より劣るという感じだ。最初の作品だから、2作目、3作目とだんだん文章力が上達したと考えると当然のことかもしれない。 ミラノの霧は、ロンドンの霧よりもすごいそうで、毎年11月になると灰色に濡れた、重たい、懐かしい霧がやってくるということです。霧に濡れた煤煙が、朝になると自動車の車体にべっとりとついていて、それがほとんど毎日だから、冬の間は車を洗っても無駄である。ミラノの車は汚いから、どこに行ってもすぐわかる。とか。 霧の季節になると、飛行場は無用の長物になり、鉄道の長距離列車の発着も当てにならなくなる。霧が出ると、車の運転も至難の業になり、車を野道に乗り捨てて歩く。というのだからすごい。 この本は、そんなミラノで、須賀さんが暮らした時の思い出がつづられている。 といいたいところだが、他の3作品と同様、他の都市の話も入っている。 例えば、ナポリ。小学校一年のころ、父親から絵葉書が送られてきて、その中に「ナポリを見て死ね」という言葉があったとか。そのナポリで1983年の春から夏にかけての数ヶ月を過ごしたそうで、その思い出が述べられています。 導入部に、父の葉書のほかに、「ポンペイ最後の日」やら「即興詩人」(アンデルセン、森鴎外訳)「帰れソレントへ」とか述べられているが盛り込みすぎ。(これじゃあ、僕の3分間スピーチと一緒だ。) ナポリの中心部を東西に走る3本の通りがあり、須賀さんの借りたアパートは、スパッカ・ナポリという一番有名な通りに面していたそうです。通りの名前を日本語にすると「ナポリ真っ二つ」というのがふさわしいという。面白い表現だ。 八百屋のおばさんとの交流も描かれています。ルゲッタという香りの高いサラダ菜をよく買ったのだが、最初は高かったのが、だんだん安くなったという。買ったものを新聞紙にくるんで、渡してくれるので、自分で購読していた新聞をおばさんのところに持って行ってあげたそうです。あるときおばさんがプレゼントをありがとうというので、何のことだろうと思ったら、大事にしていたハンカチを新聞紙の中に紛れたまま渡してしまったらしい。いまさら返せともいえないので泣く泣くあげてしまったとか。お昼を食べていけと誘われたこともあったとか。 サン・ドメニコ・マッジョーレ教会は、中世の神学者トマス・アクイナスが晩年に研究生活を送った所で、一見無味乾燥な場所という。何かないかと探索したらミイラ化した遺骸が祭壇の下にガラス張りの箱に横たえてあった。古代ローマ時代に殉教した少年で、祈れば「胸の病」を治してくれるものだそうです。ローマにあったものを17世紀にナポリの貴族がご褒美に貰い受けてきたものだそうです。あげるほうもあげるほうだけどもらうほうももらうほうだと須賀さんは書いています。もっともです。 ☆須賀敦子さんの本(既読) 「コルシア書店の仲間たち」須賀敦子著、文芸春秋、1992.04.30 「ヴェネツィアの宿」須賀敦子著、文春文庫、1998.08.10 「トリエステの坂道」須賀敦子著、新潮文庫、1998.09.01 (「BOOK」データベースより)amazon 記憶の中のミラノには、いまもあの霧が静かに流れている―。ミラノをはじめ、各地で出会った多くの人々を通して、イタリアで暮した遠い日々を追想し、人、町、文学とのふれあいと、言葉にならぬため息をつづる追憶のエッセイ。時の流れが記憶の中で凝縮され,静かにゆっくりと熟成する。やがてそれらの記憶は、霧の日に作ったポレンタの匂いやペルージャの町の菩提樹の花の薫りとなって蘇る。講談社エッセイ賞、女流文学賞受賞。

Posted by ブクログ

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