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贋作への情熱 ルグロ事件の真相
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 中央公論社/ |
発売年月日 | 1994/10/10 |
JAN | 9784120023668 |
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贋作への情熱
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巨匠のタッチを完全に模倣できる天才イタコ絵師とその才能を悪用して全世界に贋作をばら撒いた詐欺師の物語。 正確には「自伝」であるのだが、もはや「物語」といって差し支えあるまい。しいて言うなら、「起承転結」で言うところの「転」が長い。とにかく長い。読んでいるこちらが早くこの苦しみ...
巨匠のタッチを完全に模倣できる天才イタコ絵師とその才能を悪用して全世界に贋作をばら撒いた詐欺師の物語。 正確には「自伝」であるのだが、もはや「物語」といって差し支えあるまい。しいて言うなら、「起承転結」で言うところの「転」が長い。とにかく長い。読んでいるこちらが早くこの苦しみから解放してくれ、と叫びたくなるような。 しかし彼は25年という歳月をそこに費やしたのだった。 著者のレアル・ルサールはカナダ出身。学校のデッサンの授業で少し「押さえがたい何かのインスピレーションに駆られて」アレンジしてみた所、教師に散々酷評され、デッサンをびりびりに破かれてしまった。このトラウマがすべての始まりだった。 旅先で出会ったフェルナン・ルグロは彼の絵を褒めた。フェルナンは彼の絵だけでなく彼自身も受け止めてくれたようだった。こうしてすっかりフェルナンに魅了されてしまったルサールはフェルナンに促されるままに模写をする。 「模写の個展をする」などとフェルナンはささやくが、いつまで経っても個展は開かれないし、描いたはずの絵もどこに行ったのかまったく教えてくれない。詐欺師はこれらの絵に「真作」の証明書をつけて売り飛ばしてしまっているわけだが、問い詰めるとフェルナンは激昂し、罵り、怒鳴り、暴力を振るうが、落ち着くと猫なで声で謝罪し、時計やディナーをプレゼントする。ルサールもそれ以上言えなくなってしまう。そしてまた絵を描く。 これは完全にDV配偶者から離れられない者の思考回路である。共依存でもあったのだろう。 束縛や疑惑に耐えられなくなったルサールはフェルナンの元を何度か飛び出すが、そのたびにフェルナンは草の根分けても彼を見つけ出し、夥しい数の手紙を寄越し、関係者のもとにも尋常ならざる回数の電話をかけ、ルサールに対する罵詈雑言を延々とまくし立てる。そしてルサールの居場所をかぎつけると世界のどこからでも駆けつけて捕らえるのだった。 そんなフェルナンの悪事がやがて露呈し、一度は決別するルサールであったが、フェルナンの落胆や警察におびえる素振りを見ると赦してしまい、時にはまた模写を描いて渡してしまう。金のなる木を手に入れると安全な場所へ高飛びし、そこでまた豪勢な暮らしをやらかし、路銀が尽きるか何かのトラブルに遭遇するとルサールへ泣きついてくる。 読者からすればもうそんなクズは見捨てなさいと、赦してはいけないと叫びたくなるのだが、それでもルサールは赦してしまう。怯え、震え、今にも行き倒れそうだったフェルナンは恩を忘れ、水を得た魚のように社交界で暴れまわる。 これを、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も見せられる。これが「転」の部分に該当するのだが読んでいて辛い。早くその枷から解放されてと願わずにはいられない。 先述のトラウマから救ってくれた恩と、一緒に過ごした絆がそうさせるのだということはなんとなく理解できる。だがルサール自身が赦してはいけない、もうフェルナンのことは忘れると誓っても、頼られるとすぐにその誓いを破ってしまうのだ。 結局、フェルナンが死ぬまでそれは繰り返される。しかし直後に、また別の近しい人物によってルサールのイタコ技術が悪用される。ここに至って、つまり「フェルナン以外の人間によってルサールの才能が悪用された」ということをもって初めて、ルサールの重い口が開かれる(要するに本書が執筆される)。 詳細は割愛するが信じては裏切られ、信じてもいないのに騙され乗っ取られ、そんな日々を過ごしてきた著者も、現在(本書の出版された1994年頃)では穏やかに「自分のための絵画」を楽しむ生活を送っているらしい。それだけがせめてもの救いである。 ちなみに、ルサールの描いた「贋作」が日本の国立西洋美術館にもあるらしい。国立西洋美術館といえばつい最近読んだル・コルビュジエの設計した建物でもある。 ただ少し調べてみると、本書の記述も真偽は怪しいようで、結局の所「物語」として読んでおくのが妥当なのかもしれない。国立西洋美術館の「贋作」もルサールが描いたものかどうかはわからないらしいが、とりあえず「贋作」であることだけは判明しているとのこと(なので展示はせず、倉庫の奥に眠っている)。 とにかく疲れる本だった。
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