1,800円以上の注文で送料無料

都市 ちくま学芸文庫
  • 中古
  • 書籍
  • 文庫

都市 ちくま学芸文庫

増田四郎(著者)

追加する に追加する

都市 ちくま学芸文庫

定価 ¥990

550 定価より440円(44%)おトク

獲得ポイント5P

在庫なし

発送時期 1~5日以内に発送

商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 筑摩書房/
発売年月日 1994/08/05
JAN 9784480081391

都市

¥550

商品レビュー

3.7

3件のお客様レビュー

レビューを投稿

2016/05/04

ヨーロッパと日本の双方の歴史に目を配りつつ、都市の比較史的考察であり、市民社会の精神史的考察とも呼べるような議論を展開している本です。ヨーロッパ中世の社会経済史を専門としながらも、広い視野を持ち合わせた著者ならではの仕事と思わせるような内容になっています。 かつて羽仁五郎や大塚...

ヨーロッパと日本の双方の歴史に目を配りつつ、都市の比較史的考察であり、市民社会の精神史的考察とも呼べるような議論を展開している本です。ヨーロッパ中世の社会経済史を専門としながらも、広い視野を持ち合わせた著者ならではの仕事と思わせるような内容になっています。 かつて羽仁五郎や大塚久雄らがヨーロッパの市民意識を現代日本に生きる私たちにとっての「当為」として捉えていたのに対し、著者たちの社会史的な観点からの考察は、市民社会の規範性を相対化するような含みを持っていると、ひとまずは言えそうです。 ただし著者は、「市民」の概念を完全にヨーロッパにローカルなものと考えているわけではありません。その歴史的形成過程をたどることで、現代の日本社会に生きる私たちにとっての「当為」を見つけ出そうと努めています。伝統の中に深く入り込むことによって、普遍性へと向かう足がかりを見いだそうとする著者のスタンスは、「歴史意識の古層」以降の丸山眞男にも通じるものがあるのではないか、という気がします。

Posted by ブクログ

2014/03/24

「なぜ中世ヨーロッパには都市が存在し、東洋(中国や日本)にはそのような都市が顕れなかったのだろう?」という疑問である。 まず古代から話は始まるが、古代のギリシャ都市はもっぱら奴隷制にもとづく甚だ消費地としての都市であり、今でいう都市とも違うし、中世都市とも違う。 中世や近代になる...

「なぜ中世ヨーロッパには都市が存在し、東洋(中国や日本)にはそのような都市が顕れなかったのだろう?」という疑問である。 まず古代から話は始まるが、古代のギリシャ都市はもっぱら奴隷制にもとづく甚だ消費地としての都市であり、今でいう都市とも違うし、中世都市とも違う。 中世や近代になると、イタリアでは商人による活発な交易、北ヨーロッパでは領主の収奪はあったが、商工業者が一致団結し抗議するなどして、都市の自治を拡大していった(勿論一進一退しドイツは近代化に遅れるのだが)。 日本でも江戸や京に似た都市は生まれたが、鎌倉〜徳川幕府の収奪に対抗することがあまりなく、むしろ商人が政権に迎合したりするなど、あまり自治を求めなかった。これはやはり外国交易がなかったことが原因と思われる。現に、戦国時代に博多や堺は自治を求める気風はあった。ただ欧州にくらべ微々たるもので、次第に天下統一の時代に吸収されて行ってしまった。 中国の場合では、都市は皇帝の居城であった。かつ、商人や職人はいるにはいたが、共同で自治を高めるという意識が目覚めることはなかった。これは中国というくくりとして大きすぎたことと、祖先崇拝を推奨する儒教の影響が考えられる。すなわち、「祖先に顔向けできるよう、周りを押しのけ出世しなければならない。」という、なんだか身内を大切にしているのかないのか分からない気風があったのだ。 これは歴史であるが、以上のような気風は産業化・情報化が進み均質化した現代でもなお、当てはまるように思える。インドでもいまもカーストは厳しくまもられているように(著者はインドで自治都市が生まれなかった原因をカーストに求めた)、現代でもその気風や気質はあるだろう。西洋で語られる「市民」は日本のそれとは違う気はするし、日本で語られる「市民」もまた西洋とは違うように捉えられる。 今一度、市民の役割を学ばなければならないのだろうか。変質するような、それともしないような社会のために。 著者は社会経済学史の先生であり、個人的に大変関心がある分野でもある。

Posted by ブクログ

2011/01/11

「市民」ということについて、東洋と西洋の都市の在り方を通して論じている。 東洋に「市民」という概念が根付かなかったことは、東洋が古代から家を中心とした文化や価値観を形成してきたからである。西洋では古代からポリスで市民政治が行われるなど、市民としての共同体を形成してきた。 本書では...

「市民」ということについて、東洋と西洋の都市の在り方を通して論じている。 東洋に「市民」という概念が根付かなかったことは、東洋が古代から家を中心とした文化や価値観を形成してきたからである。西洋では古代からポリスで市民政治が行われるなど、市民としての共同体を形成してきた。 本書では西洋の都市の形成を古代、中世、近代と順に観ていき、それぞれが連続性を持っているとする。特に中世の経済形態において、北欧では市民的な精神が、南欧では大資本的な精神が形成されたことを分岐点とみている。 日本で市民的な精神を育む必要性も述べている。

Posted by ブクログ