最近中東事情 特派員の見た500日 丸善ライブラリー120

丸山徹(著者)

• 販売会社／発売会社: 丸善/
• 発売年月日: 1994/04/20
• JAN: 9784621051207

商品レビュー

2010/05/28

共同通信の記者による…

[文庫ＯＦＦ]

共同通信の記者による中東各国の事情をまとめた本。　湾岸戦争直後に出た本なので全然「最近」の事情ではなく15年以上前の中東事情になるが、まぁそれは仕方のないこと。　内容は必ずしも古くて役に立たないというわけではないので、読む価値はある。ただ、マスコミ人種一般から受ける「始めに結論ありき」な印象が強く、頭から信用する気にはなれない本。　著者の好みとか政治的傾向を見極めて読まないとバカを見るかも。

2013/09/04

(2003.04.12読了)(2002.10.25購入)
特派員の見た500日
（「BOOK」データベースより）amazon
遺棄された戦場の国レバノン、揺れるアラブの盟主シリア、サバイバルに賭ける王国ヨルダン、安全保障という悪夢を抱えるイスラエル、国なき悲劇の民族クルド―。中東は一枚岩ではなく、どんな精密な理論にもあてはまらない錯綜した情況にある。本書は、通信社の特派員として中東の十カ国を飛び回った著者が、既存の「中東の常識」を白紙に戻し、ジャーナリストとして実際に現場を踏んで自分の目と耳で確かめた事実を克明に記録したルポルタージュである。

☆関連図書(既読)
「湾岸危機の教訓」小川和久著、PHP研究所、1991.01.07

2008/10/26

★90年ころの中東概説書★「最新」というが、1989年から91年の湾岸戦争までの共同通信記者の取材記。「ニコシア支局」とは聞きなれないが、90年代前半までは中東の取材拠点はキプロスにあったのだと初めて知った。以下は備忘録
▼レバノン＝東にアウン将軍をリーダーとするキリスト教マロン派の旧レバノン政府軍、西はイスラム教スンニ派及びシーア派の連合軍。東をイラク、西をシリアが支援。キリスト教優位の政治体制が続いたが、イスラム教の人口が上回り混乱に。
▼シリア＝エジプトと並ぶ中東の大国。強硬派。彼らにとってシリアとレバノンはもともと同じ兄弟国。シリアにはレバノンの大使館がなく、レバノン人はシリアで内国民待遇を受けている。
▼イラク＝世界最古のメソポタミア文明の末裔との自負。フセインが軍をバース党化。スンニ派による少数支配。海（ペルシャ湾）への出口はシャットルアラブ川の河口ファオ１か所だけ。ファオを含む南部は（中心都市はバクダッドに次ぐ人口100万人のバズラ）はシーア派が多数派を占め反乱の可能性が眠る。
▼ヨルダン＝実態はパレスチナ人の国。風見鶏外交で存続を図る
▼ＰＬＯ（パレスチナ解放戦線）＝チュニジアの首都チュニスに亡命本部がある。アラファト議長はカイロ大工学部を卒業し、クウェートへ。建設会社のオーナーとして成功し、アラブの民族自決運動を起こしたナセルに心酔し、革命家に転じた。後にＰＬＯの中核となるファタハ（征服）を、ヨルダン征服下にあった東エルサレムで64年に立ち上げる。ＰＬＯは当初から寄り合い所帯で、ＰＬＦ（パレスチナ解放戦線）はＰＬＯの最強硬派のひとつ。パレスチナの国家像の選択肢としては、ひとつが「ヨルダン・オプション」。パレスチナが独立国家の樹立を形式的に宣言したあと、ヨルダンと合併し、ヨルダン・パレスチナ連合国をつくる。ヨルダン・オプションはイスラエル労働党、イスラエル・オプションはリクードの政策。
▼イスラエル＝アラブから奪った占領地。91年のマドリードでの中東和平会議では、67年の第３次中東戦争でイスラエルが占領したゴラン高原（シリア）、ウエストバンク（ヨルダン・パレスチナ領）、ガザ（エジプト領）の返還を国連決議にも基づき解決することが漠然と合意された。ゴラン高原は戦略上、ウエストバンクは宗教的に返せないが、ガザは金がかかるので返すだろうとのこと。
▼クルド＝国を持たない最大の民族。イラクの北部。イラク、イラン、シリア、トルコ、ソ連に2500万人が広がるといわれる。反フセインからイラン、シリア、米国はイラク北部のクルド政権を支援したが、独立となると話は別。