長い旅の記録 わがラーゲリの20年

寺島儀蔵【著】

• 販売会社／発売会社: 日経/
• 発売年月日: 1993/06/02
• JAN: 9784532160975

商品レビュー

2021/06/10

理想郷などない。
真面目に共産主義運動し樺太からソ連へ亡命。
スターリンが支配するソ連は正に現在の北朝鮮。
よくぞ生き残ったものである。
これは一個の不倒不屈の記録。

2021/02/21

読み応えのある本でした。

著者の寺島儀蔵さんは1909年（明治42年）生まれ。1927年（昭和２年）に当時非合法だった共産党に入党し、翌年の３・１５事件で検挙され、計6年半服役。
1935年に南樺太からソ連に密出国。1937年にスパイ罪で逮捕され、死刑判決を受けたがその後の再審で25年の禁固刑となり、極寒の強制収容所に入れられます。スターリンの死後、1955年に釈放されたものの、再び日本の土を踏んだのはソ連崩壊後の1993年、日本を出てから58年後のことでした。

何とも壮絶な人生です。
強制収容所では、過酷な環境に耐えられず死亡する囚人が後を立たなかったそうです。
しかし、絶望的な環境に置かれても寺島さんは希望を捨てず、再び日本に帰るまで生き延びると決意します。

地獄の沙汰も金次第と言いますが、強制収容所でも金やコネがある者は比較的楽にすごすことはできたと寺島さんは書いています。しかし無一文の外国人である寺島さんにそんなものはありません。

寺島さんは、日本人として恥ずかしくない振る舞いをしようという信念のもと、嘘と盗みが横行する強制収容所であっても正直に振る舞いました。そして強制収容所の中にある工場で旋盤工の見習いとなり、技術を身につけた寺島さんはいつの間にかなくてはならない存在となりました。
そんな寺島さんの人柄に惹かれた囚人仲間たちに支えられ、ついに寺島さんは強制収容所から生還できたのです。

1955年に寺島さんは18年ぶりに出獄できたものの、1993年まで日本への帰国を許されませんでした。

出獄から帰国を果たすまでの３８年間の歩みは、続編の「続 長い旅の記録―わがロシア、わが日本」をお読みください。望郷の念を募らせ涙を流す場面は胸に迫るものがあります。