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奴らが哭くまえに 猪飼野少年愚連隊
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奴らが哭くまえに 猪飼野少年愚連隊

黄民基【著】

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奴らが哭くまえに 猪飼野少年愚連隊

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 筑摩書房/
発売年月日 1993/09/05
JAN 9784480856432

奴らが哭くまえに

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2009/05/04

在日コリアンが多く住む大阪市生野区猪飼野地域で昭和30年代に少年時代を過ごした著者が、当地の悪ガキどもがそれぞれ違う方向に成長していく様子を当時の世情を絡めて描いている。「昭和30年代、この小さな区域に20余の愚連隊と暴力団組織がひしめきあっていた」ところで生まれ育った朝鮮人の子...

在日コリアンが多く住む大阪市生野区猪飼野地域で昭和30年代に少年時代を過ごした著者が、当地の悪ガキどもがそれぞれ違う方向に成長していく様子を当時の世情を絡めて描いている。「昭和30年代、この小さな区域に20余の愚連隊と暴力団組織がひしめきあっていた」ところで生まれ育った朝鮮人の子どもたちは、日本からも、本国からも、また生活するのに精一杯だった朝鮮人の大人からもまともな保護を期待できるような環境にはなく、自分の身は自分と仲間の友情で助けるという連帯のようなものがあった。状況を分析する知識がないので理不尽な不遇に嘆き悲しむこともあまりなく、それはそれとして受け入れ、とりあえず生きるみたいな力強さと機敏な賢さがあり、爽快感とともに彼ら子どもたち、もしくは在日コリアンに対する尊敬の気持ちも生じる。ある者はヤクザ者になり、ある者は医者、著者はジャーナリストだが、東京の大学に進んだ友人は自殺した。子ども時代にいやいや北朝鮮に帰還した子もいる。 小松川女生徒殺人事件がテレビで報じられるのを息を飲んで見入る様子で幕を開ける。「ショーウィンドウに置かれた14インチのナショナルテレビが李珍宇の顔を大きく映しだしていた。駐車中の車からはポール・アンカの「ダイアナ」が聞こえた。私たちの身体はロカビリーのリズムにのらなかった」。 進駐英語の影響とアメリカ文化にあこがれた彼らは、自分たちのマドンナを「生野のエリザベス・テーラー」と名づけたり、ドブ川を「ミシシッピー」、喧嘩に強い金城はデイビー・クロケットから「デイビー・ケンジ」。合いの子ではなくハーフ・ボーイ。狭く冴えない世間をアメリカの夢を拝借して楽しく彩る。その辺の生活の描写がとても楽しい。人が死んでも今生の別れがあっても乗り越える明るさがあるのは、それほど最悪な時代ではないと、当地の朝鮮人らが考えていたからだということは著者も分析している。またそういう見方をするところが著者の資質だと思う。 「彼らにとっても、戦後という期間は自分を噴出させる数少ないチャンスだった。つまり、戦後における日本の暗澹たる世相は、彼らには歓迎こそすれ、悲観するものは何ひとつなかったのである。戦後を象徴する言葉ーー廃墟、空腹、ヤミ市、暴力、それらのすべてが、彼らにとっては起死回生の絶好のチャンスだった」。 結局、多くの暴力団組織が「対三国人抗争に存在意義を見いだしていた」中にあって、唯一大規模な朝鮮人の愚連隊明友会が山口組により壊滅され、また日韓の国交回復に伴い朝鮮人が「三国人」から協定永住者となり「猪飼野界隈における相互扶助的共同体もその姿を変えつつあった」ころ、子どもたちも別々の道を歩むようになるところで終わる。 これは10年ぐらい前に読んでたまたま再読。当時は背景について分かっていない部分もあったし、人生を泣きながら笑うみたいな著者のハートの良さに気づいていない部分もあったなあと思った。本当に今さらですが、こんなに良い本だったのかと思ったので。

Posted by ブクログ

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