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岡並木教授の「右脳」フォーラム
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | ダイヤモンド社出版研究所/ダイヤモンド社 |
発売年月日 | 1992/10/15 |
JAN | 9784478093030 |
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岡並木教授の「右脳」フォーラム
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岡並木。なつかしい名前を偶然見つけ、この本を手に取った。 雑誌CAR and DRIVER(カーアンドドライバー日本版)を、私の大学生時代、私自身は車に興味なかったが、友達が熱狂的なカーマニアで購読していたので、よく岡並木さんの巻頭コラムだけ読ませてもらってた。 この本では、19...
岡並木。なつかしい名前を偶然見つけ、この本を手に取った。 雑誌CAR and DRIVER(カーアンドドライバー日本版)を、私の大学生時代、私自身は車に興味なかったが、友達が熱狂的なカーマニアで購読していたので、よく岡並木さんの巻頭コラムだけ読ませてもらってた。 この本では、1985年から1992年までに同誌に掲載された国内、外国両方の都市論、交通論などのコラムのうち118本が抜粋されている。 なお1985年といえば昭和60年、1992年は平成4年だ。今では当たり前になった事情に関して、その萌芽期の情勢をコラムという格式張らない文体で読めるという一面でも、この本は貴重だと思う。 例えば「ドアミラーの隠れた危険性」という1989年のコラム。高速道路での車の追い越しがハッとするような近い距離でされることが多くなったのでは?として、その背景を当時のフェンダーミラー車に代わってドアミラー車が増えてきたことに言及している。岡さんはユーザーが2つのミラーのタイプについてその特性を十分考慮したうえで選択せず、スタイルの良さや周りがそうしてるからという理由だけで安易にドアミラーを選択しているのではと疑問を呈している。その証拠として、タクシードライバーの多くはプロとしてフェンダーミラーを選択しているということを念頭に置くべきだと書く。 また「新東京都庁ビルの大いなる欠陥」という1991年のコラムも挙げておく。 都庁の白っぽい壁面に並ぶ長方形の黒い部分が窓ではなく、江戸時代の連格子と(当時の先端技術の)半導体をイメージしたデザインだという記述については私も知らなかった事実だが、岡さんは都庁全体のデザインよりも、実際に自分が歩いて建物に入ろうとしたときに、表の広場で舗石と舗石との間の目地の隙間に関心を向ける。「細いハイヒールを履いていたら足を取られないか?」 私はここで別に重箱の隅をつつくかのような細部に注視せよと言うのではない。岡さんの視点がここに集約されていると感じているから強調するのだ。つまり、交通などの社会制度やインフラは、すべて使う人、つまり生活者の視点を前面に置くべきだという発想だ。それは言い方を変えれば、しょっちゅうユーザー側の視点がないがしろにされ、政府やメーカーや売る側などの“声の大きい”立場が優先されがちであることへの警鐘でもある。 ここで簡単に岡さんの経歴に触れると、朝日新聞記者を経て、コラム執筆時点では比較都市史、人間の移動史を専門とする評論家や大学教授として活動していた。(故人) 私が岡さんのコラムに引き付けられていたのは、テーマの多様性と、独自の着眼点、そして問題提起での押しつけがましくない姿勢だ。 特に昨今のネット社会では、意見表明がすなわち自己の主張をいかに前面に出すかという点のみにすり替えられている残念な現実があり、そのなかで岡さんのコラムの押しつけがましくなく、他人に意見を引き出させるような文章表現法には、私もレビューなどの文章作成において大きく影響を受けた。 この本のタイトルの「フォーラム」についても、本来の意味は「特定のテーマに関する自由な意見交換、意見表明」であり、内容を的確に言い表しているという点では、岡さんの品の良いセンスの一端を示していると思う。
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