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宮沢賢治の宝石箱 朝日文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 朝日新聞社/ |
発売年月日 | 1991/09/01 |
JAN | 9784022606624 |
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宮沢賢治の宝石箱
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宮沢賢治の宝石箱
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『宮沢賢治の宝石箱』 板谷栄城 (朝日文庫) 宮沢賢治は、夜の空にかかる三日月を“黄水晶(シトリン)の薄明穹(はくめいきゅう)”と表現した。 私が一番好きな賢治用語だ。 “黄水晶”に“シトリン”とルビをふる賢治の感性! 宮沢賢治の詩や童話にはたくさんの宝石が登場する。 そしてそこには、いつ、どこで、どういうふうに使われるのか、ということについての賢治的な独特の法則があるのだ。 著者の板谷さんは、宝石一つ一つに賢治作品の例を挙げ、その法則を分かりやすく説明してくれている。 話が脱線したり、自分でお話を作って、こうだったらいいなぁとか言ったり、ご本人がすごく楽しそうに書いているのがいい。 さて、賢治は作品に様々な宝石を使っているが、そのほとんどは、宝石そのものの描写ではなく、風景や心象を表すための道具、いわば心象絵具といて使われていた。 漢字で書いて片仮名でルビが振られたものが多い。 緑玉髄(クリソプレーズ)、藍銅鉱(アズライト)、蛋白石(オパール)、紅宝石(ルビー)、月長石(ムーンストーン)、天河石(アマゾンストン)、猫睛石(キャッツアイ)、金剛石(ダイヤモンド)、紫水晶(アメシスト)、黄水晶(シトリン)、などの片仮名読み以外にも、黒曜石(こくようせき)、瑪瑙(めのう)、水晶(すいしょう)、琥珀(こはく)、孔雀石(くじゃくせき)など。 漢字の美しさに心が洗われます。 賢治は、「石っコ賢さん」と呼ばれていたほどの石好きで、自らハンマーを持って石を採集したり、鉱物標本を作ったりもしていた。 将来的には、人造宝石や宝石加工業の仕事も考えていたそうだが、その計画は実現しなかった。 その代わりとでもいうように、賢治の心の中の宝石たちは、彼の作品の中で、実物以上の輝きを放つこととなるのだ。 賢治作品では、空の描写によく宝石が使われる。 夜の空は「藍晶石」、日中の空は「トルコ石」、そして興味深いのが、夕方の空は「黄水晶」で、明け方に「琥珀」を使っているところだ。 私なら、夕暮れのとっぷりと暮れた一日の疲れを残したような空には「琥珀」を使いたい。 明け方は爽やかで色が薄い感じがするから、こっちを「黄水晶」にするなぁ。 賢治が真逆なのが面白い。 板谷さんによると、「琥珀」は、賢治にとって特別な宝石なのだそうだ。 他の例からすると、「アンバー」とルビを振ってもよさそうなものだが、すべて「こはく」と読ませていることからも、愛情が感じられるのだという。 琥珀の持つ暖かく穏やかな光を、賢治は好きだったようだ。 岩手の冬は厳しい。 だんだんと明るくなり暖かくなってゆく夜明けの空に「琥珀」を使い、あとはただぐんぐん冷え切ってゆくだけの、空気がピンと張りつめた夕方の空を「黄水晶」で表したのは、やっぱり賢治らしい。 賢治の造詣が深かったのは、ダイヤモンド、ルビー、サファイヤなどのいわゆる“宝石”の方ではなく、トルコ石や孔雀石や玉髄といった、鉱物に近い、“貴石”の方だったそうだ。 「玉髄」なんて、賢治作品で初めて知ったもんなぁ。 板谷さんの説明によると、玉髄は、半透明でうっすらと濁っているトコロテンのかけらのような宝石だそうである。 有名な「永訣の朝」の、「あめゆじゅ(あめゆき)とてちてけんじゃ」の「あめゆき」、つまり「みぞれ」のイメージが、この玉髄なのだそうだ。 綺麗ですね。 この本には、この「賢治宝石箱」の他に、「賢治植物園」と「賢治実験室」の章がある。 実験室は面白いですよー。 硝酸ナトリウムを使った「過冷却の水」を作る実験とか。 硝酸銀の溶液に銅線を浸して作る「銀の微塵」とか。 水銀と他の金属との合金を「アマルガム」と言うそうだが、そんな単語が賢治の詩にはいっぱい出てくる。 錬金術師みたいでかっこいい。 科学用語を多用した賢治作品を読むのは、一般人にはなかなか大変なので、板谷さんのような水先案内人がいると助かります。 ちなみに、ニッケルと鉄とコバルトはアマルガムにはならないそうです。 よくわからんけど(笑) 賢治が見ていた心象風景を、彼と同じ目で見ることはできないけれど、少しだけ追体験できるような気がします。 楽しい賢治ナビ。 大好きな本です。
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