親鸞のコスモロジー

大峯顕(著者)

• 販売会社／発売会社: 法蔵館
• 発売年月日: 1990/11/20
• JAN: 9784831880420

商品レビュー

2020/04/02

朝日カルチャーセンターなどでおこなわれた著者の講演をまとめた本です。フィヒテの研究者であり、俳人としても知られる著者が、親鸞の思想について、主として宗教哲学的な観点から考察を展開しています。

著者の独創的な発想は、名号にかんする言語論に見られます。著者はまず、日常生活のなかで用いられることばは、そのときどきの場面における有用性に尽きているといいます。世界のありようを学問的に認識するために用いられる「ロゴス」としてのことばは、日常語としてのことばとは異なる次元にあり、さらにこれを超えたところに宗教のことばがあると著者は主張します。宗教的言語とは、ものとことばが一体で分かれていないようなありかたをしていると著者はいい、とくに名号において宗教的な真実と「南無阿弥陀仏」が一つになっていると主張されています。

また著者は、宗教的言語とおなじく詩的言語においても、ものとことばが一体になっているといい、芭蕉の俳句にそうしたことばの働きを見ようとしています。

いずれも一般の聴衆に向けて語られた講演ということもあり、読みやすい内容になっています。