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思想としての東京 近代文学史論ノート 講談社文芸文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 講談社 |
発売年月日 | 1990/03/10 |
JAN | 9784061960701 |
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思想としての東京
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「近代」というテーマをめぐって日本の文学がたどった歩みを、東京という都市の歴史にそくして論じた本です。 明治維新以降の日本の近代化は、あらたに東京の山の手に流入してきた地方出身者たちが、江戸の下町に住んでいた人びとから主導権をうばいとることによって進展していきました。著者はこの...
「近代」というテーマをめぐって日本の文学がたどった歩みを、東京という都市の歴史にそくして論じた本です。 明治維新以降の日本の近代化は、あらたに東京の山の手に流入してきた地方出身者たちが、江戸の下町に住んでいた人びとから主導権をうばいとることによって進展していきました。著者はこのことを、「東京を“中央”として意識した人々が、その中央志向のゆえに“近代”への憧憬を急進的に生きてしまった」と説明し、「東京」が「近代」という神話の象徴となったと指摘しています。 これに対して、「農村からのおびただしい人口流入があったとき、それにたいしてヒステリックな反発を示すことは、都会人の羞恥心が許さない」という江戸っ子の「粋」が存在していたと著者は述べ、そこに地方出身者たちによる「東京の下町」の発見という、アイロニカルな事態がかさなって、日本の近代文学に特有の水脈が形成されていったことを明らかにしています。 さらに「補論・文学史の鎖国と開国―身内の眼・他人の眼」では、平野謙の執筆した『昭和文学史』に対する江藤淳の批判と、「平野謙は〈日本近代文学〉なるものを、いわば鎖国の王国としてそこに批評(の意識)を閉じこめたのである」という解釈を紹介し、同様の構図が本多秋五、中野重治と引き継がれていったことを指摘しています。そのうえで、「鎖国の王国」のなかで息づいていたある種の倫理性がしだいにうしなわれつつあると論じて、日本文学における「近代」の陰に存在していたエートスを明らかにしています。
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東京を一個の主体のように扱い、時期の異なる数枚の地図という顔写真とともに移ろう歴史を眺めること。著者が眺めたのは、明治時代から昭和の戦後までの<東京>において、<東京人>がいかにアイデンティティを確立していくかの精神風土であるが、その過程は同時に<東京>の持つ地方性を崩壊させて...
東京を一個の主体のように扱い、時期の異なる数枚の地図という顔写真とともに移ろう歴史を眺めること。著者が眺めたのは、明治時代から昭和の戦後までの<東京>において、<東京人>がいかにアイデンティティを確立していくかの精神風土であるが、その過程は同時に<東京>の持つ地方性を崩壊させていくことであった。江戸の古地図の持つ神話性は西欧近代の地図手法にとって代わられ、<標準語>が<東京方言>を基に作られた「中央的普遍性」であったことは、生活場と公的場との間に近代化がいかに心理的軋轢を生んだかを示している。その痕跡を文学および文明に見つけながら、著者は的確に抉り出してみせる。 大まかに示すと以下のようなものだ。 <山の手>と<下町>、東京志向の心性、柳田國男の見つめた「民話」と「方言」の世界、白樺派の世界像の構造、芥川の芸術至上主義、関東大震災後の都市復興計画と『東京行進曲』のモダニズム、『痴人の愛』の文明批評、戦後の「東京ブギウギ」 に見るアメリカニズム(「米都」としての東京)、東京の視覚的イメージの変容と『東京ブルース』(「地方の東京化」と「東京の地方化」) 最後に著者は、この著作の表題でもある「東京=思想」を、身内−友人−他人という人間関係の図式を借りながら、「他人=身内化の錯視」というエネルギーこそが東京の百年をつくってきたのだとし、「他人=身内化の錯視」を錯視でないものとする衝動が、「帝都」への合体の情熱を育み、日本近代化の最大エネルギーと結論する。 この著作を一気呵成に読みながら僕は、東京という一個の人格に備わる、精神と肉体の両側面を交互に?どちらがネガティフかポジティフかを判断する間もなく?見せつけられ眩暈した。そして、これだけ東京に肉迫することのできる磯田光一という著者が横浜人であったという事実をぼんやりと頭の隅に浮かべながら、著者の視点の拠って立つところの意味を考えさせられた。たいへん有力な東京論者であることに間違いない。戦後の東京論の系譜学においても第一人者であり、川本三郎が彼の後を追うのである。
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