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眠れる美女 ハヤカワ・ミステリ文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 早川書房 |
発売年月日 | 1990/01/15 |
JAN | 9784150705145 |
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眠れる美女
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眠れる美女
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商品レビュー
4.3
3件のお客様レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
とても複雑に入り組んだ人間関係と時系列。 ただし、なんとなく読み進めてしまいます。440ページもある話ですが、一気に読み終えました。 石油王のレノックス家の一人娘のローレルラッソが誘拐され、その夫の依頼によってローレルを探し始めるリュウ・アーチャー。 ただし、事件は意外な展開を見せて… 25年前の殺人事件の真相にもリュウは踏み込まざるを得なくなる、という話。 石油王一家のわがままな男たちに振り回された犯人は…というお話。 その辺の凡百なミステリ小説よりは圧倒的に面白いのですが、どうしてこれが絶版なんでしようね。
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- ネタバレ
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冒頭、あまりにもロマンティックな展開に面食らった。これはロス・マクではなくてハーレクインかと思ったほどだ。 とはいえ、このような幕開けは嫌いではない。寧ろ従来のハードボイルド探偵小説物の定型を破る斬新な導入部と評価できる。 この、石油が海へ流出するというシーンから始まる本書は従来探偵事務所に依頼人が来て仕事を依頼する定型から脱却し、自らをいきなり事件の渦中に飛び込ませ、依頼人を得るというまったく逆の手法を用いている。これは常に傍観者たる探偵を能動的に動かそうとした作者の意欲の表れではないだろうか? したがって本作ではアーチャーは本作の中心となる女性、ローレルに好意を抱き、家に誘う。さらに珍しいことに事件の関係者の一人と一夜を共にしたりするのだ。 しかしやはり中盤以降は従来の観察者及び質問者のスタンスに回帰し、ある意味、試みは半ばで費えてしまう。 物語中、登場人物に「そんなに質問ばかりして嫌にならない?」とアーチャーに尋ねさせている所は非常に興味深い。 しかし今回も登場人物に対して容赦がない。誰一人、どの家族として倖せな者が出てこない。常に何らかの問題を抱えており、陰鬱だ。 チャンドラーは時には非常に印象的な女性を登場し、物語に一服の清涼剤をもたらしたりしたのだが、ロス・マクは常にペシミズムに満ちている。 またモチーフとなる石油の海への流出が物語の進行のメタファーとなっているのも上手い。 ただ『地中の男』の山火事と違い、本作の中ではそれは解決しない。これも真相は判明するものの、事件そのものが解決しないことのメタファーなのだろう。 しかしここに来てロス・マクの良さが一層判ってきた。今なら以前読んだ『ウィチャリー家の女』、『めまい』も、もっと面白く読めるかもしれない。 未読の作品の復刊も強く求める次第である。
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1973年発表リュウ・アーチャーシリーズ第17作。錯綜する謎は終盤に向かうほど乱れ縺れていく。ラストシーンで暗鬱なる真相へと辿り着いたアーチャーは、ひとときの安らぎの中で眠る娘の額に口付ける。美しくも哀しい、心に残る幕引き。ミステリ史に残る傑作群を発表した円熟期を経て、ロス・マク...
1973年発表リュウ・アーチャーシリーズ第17作。錯綜する謎は終盤に向かうほど乱れ縺れていく。ラストシーンで暗鬱なる真相へと辿り着いたアーチャーは、ひとときの安らぎの中で眠る娘の額に口付ける。美しくも哀しい、心に残る幕引き。ミステリ史に残る傑作群を発表した円熟期を経て、ロス・マクドナルドが到達した境地の何と凍てついていることか。 荒んだ家庭の悲劇を厳しい眼差しで見つめ続けた男は、さまざまな末路へと至る卑しい人間の業を声高に誹ることなく、渇いた感傷のみ残して立ち去っていく。彼の作品の中でも複雑さにおいてはずば抜けているプロットを持つ「眠れる美女」は、筋を追うだけでも大変なのだが、終章で氷解した後に改めて物語を振り返れば、隅々に至るまで緻密に構成されていることが分かる。前作「地中の男」では山火事、本作では石油流出事故が、愚弄なる社会悪の象徴として暗流に留まり、展開の起伏に呼応するかのように勢いを増して不安を煽り脅かす。物語全体を揺り動かすのは、愛するが故に一層重くのし掛かる不信であり、善悪の狭間であまりにも脆く崩れ去り、現状に耐えきれず罪を犯さざるを得ない人間の悲劇である。 ロス・マクドナルドでしか味わうことのできない芳醇な比喩は、対象を簡潔に切り詰めて描写するハードボイルドのスタイルからは乖離しているかもしれないが、その世界観は孤高であり、生々しい感情を鋭く抉り取ることにおいて、他の作家の追随を許さない。 「眠れる美女」において儚い愛情の萌芽さえ感じさせるアーチャー。ロス・マクドナルドは、孤独な男の「それから」にどのような想いを込めていたのだろう。
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