浅草博徒一代 伊地知栄治のはなし

佐賀純一【著】

• 販売会社／発売会社: 筑摩書房
• 発売年月日: 1989/02/25
• JAN: 9784480812698

商品レビュー

2022/06/25

自伝の分類にしたが、伊知地英治の話を医師である佐賀純一氏が聞きテープに録音し、それを１冊の本にまとめたものである。面白いエピソード満載で出版後すぐに英訳がでたのもうなずける。ちなみのその英語版”Confession by Yakuza"はどうもボブ・ディランが読んだようで、アルバム"love and Theft"の収録曲の歌詞にこの本の文章と酷似する歌詞が頻出しているそうである。
　ページをめくろと百年前の東京のアウトローの世界が、匂いを伴って煙のように立ち上る本である。録画しながら本人から一冬かけて話を聞いたのだから、まるで佐賀さんが体験したかのように文章化できている。
　特に戦前の今とは社会秩序が全く違う世界の話は読み応えがある。
　伊知地氏は何度も牢屋に入り、いろんな女性とつきあい、賭場を管理し、裏の稼業をいろいろやった人である。軍隊も経験し、今の北朝鮮あたりまで駐屯し、警察ともやり取りし、ヤクザ者とゴタゴタも乗り越え、女郎を逃しとよくもまぁというような人生である。
　このような本にまとめてくれて佐賀さんありがとうといいたい。