ブラック・レイン 新潮文庫

マイクコーガン【著】, 酒井昭伸【訳】

• 販売会社／発売会社: 新潮社
• 発売年月日: 1989/09/25
• JAN: 9784102300015

商品レビュー

2013/08/31

１９８９年公開のリドリー・スコット監督による名作映画のノベライズ版。
ニューヨーク市警殺人課の主人公のニックとバディーのチャーリーが日本のヤクザの抗争にで遭遇し追跡の末に男を逮捕するものの、日本国内での犯罪で指名手配されていたため犯人の佐藤を日本に護送することとなる。しかし、到着した大阪空港で警察官のふりをした佐藤の手下たちに佐藤を引き渡し事実上解放してしまう。権限が無いにも関らず、強引に大阪府警の捜査に加わろうとするニックとチャーリーだが、刑事部長の大橋警視はそれを許さず、二人の銃を押収した上で松本正博警部補を二人の監視役につけた。捜査の方法、日本の風習に戸惑うニックは捜査の中に佐藤の策略にはまりチャーリーを殺されてしまう。ニックの佐藤に対する行動は義務から私怨へ変化して行く。
シナリオからのノベライズなので映画のストーリーとほぼ同じ展開ではあるが心理描写と相まって主人公の警察機構体制に対する反発する姿をサイバーパンク風の演出により克明に描写されている。また題名の『ブラック・レイン（Black Rain）』とは、空襲などによる大火によって起こる煤混じりの雨をさすが、作中に抗争の元となったヤクザの親分である菅井が大阪空襲後の黒い雨に纏わる因縁をからめアメリカによる「戦後統治」により日本人にもたらした個人主義が、義理人情の価値観を喪失して佐藤のようなアウトローを産んだと暗にアメリカ人を批判するシニカルなテーマもより判りやすく表現されている。
因みに映画では凶悪犯人役の佐藤を演じた松田優作の遺作でもある。