牧場の冬 ハーレクイン・ロマンスR641

ミリアムマグレガー【作】, 仲本ヒロコ【訳】

• 販売会社／発売会社: ハーレクイン・エンタープライズ日本支社
• 発売年月日: 1988/11/20
• JAN: 9784833506410

商品レビュー

2013/12/07

ハーレクインに出て来る男の職業って、社長と貴族の次くらいによくあるのが牧場主だと思うんだけど、海外じゃ牧場主ってものすごく格好良い憧れの仕事だったりするんだろうか。結婚したら一緒に早起きするのが大変そうだなぁ、くらいしか思うことがない。
私の憧れの職業は、振付家とか彫刻家とか漁師とか革命家とか。

「あれは使用人用のコテージだ。（中略）エリックは雌羊を二千頭も世話してるんだ。（中略）ジェイクは鹿の専門だ」リンディは勘違いした。「羊の歯科医なの？」「いや角のある鹿のことさ。うちには雄鹿が半ダースと雌鹿が二百頭もいるんだ」

あっ、この牧場主も勝手にキスしましたよ！ 雇用主が家庭教師に!! 訴訟だ!!

「妊娠した羊が仰向けになると立ち上がれなくなる」って書いてあって、丸いおなかでふわふわした羊が仰向けで短い手足をぱたぱたさせてるかわいそかわいい光景を想像してるんだけど、これほんとかなぁ。

60〜90年代のハーレクインだと雇用主は勝手にキスしたり抱きしめたり、金持ちでイケメンなのをいいことにやりたい放題だけど、セクハラという概念が浸透した2000年代以降の作品にはやっぱり変化があったりするんだろうか。しかし、セクハラに配慮する石油王やカウボーイって想像しづらいな…。
そういえば、ハーレクインに出て来る社長や牧場主ってだいたいみんな胸毛が生えててヒロインに勝手にキスするけど、少女漫画でよくある（と噂に聞く）「壁ドン」って読んだ事無い気がする。もしかして日本固有の文化なんだろうか。絵じゃなくて文章だから私が読み落としてる可能性はある。
石油王やカウボーイはともかく、今どき勝手にキスしたりする経営者は訴訟リスクに対して認識が甘すぎると思うので、どんだけイケメンでもやめといた方がいいと思う。そのうちもっとすげーことして賠償金で会社潰れるぜ。

交際期間無しで突然プロポーズは結構定番だと思うけど、「結婚しよう」とか指輪でもなく、ヒロインの目の前で第三者に向かって「僕は彼女と結婚する」といきなり宣言するのはかなり斬新な気がする。

『牧場の冬』の舞台は作者が暮らしているニュージーランドで、119頁上段「（前略）七月になった。寒さはさらにつのり、海抜千メートルともなると山は雪で真っ白だ。」というくだりに南半球を実感。そうか、ニュージーランドって今寒いんだ…。

家庭教師として牧場主に雇われたヒロインが、そこの子供にわかりやすいように「十頭の羊が居て一頭逃げたら残りは？」って教えてたら、後日「（牧場の使用人の）バートが『羊が一頭逃げたら全部ついて行っちゃうから答えはゼロ』って言ってたよ！」と子供にぷんすかされるくだりがかわいかったです。

ハーレクインの恋敵って、実際男の中で天秤にかけられてるような場合って無くて、だいたいヒロインかライバル女の勘違いだと思うんだけど、全然好かれてないのにずっとまとわりついて「私は彼と婚約してるんだから！」と主人公をいじめる『牧場の冬』のシェリルは頭がおかしいんじゃないかと思った。