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シブミ(上) ハヤカワ文庫NV
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 早川書房 |
発売年月日 | 1987/09/30 |
JAN | 9784150404628 |
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シブミ(上)
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商品レビュー
4.7
3件のお客様レビュー
私の現代海外ミステリへ出発はあまりいいものとは云えなかった。気を取り直して今度はもう一方の海外ミステリ出版の老舗、早川書房の本に手を着けることにした。今度は失敗しないようにとどれにしようと迷ったが、やはりここは『このミス』に頼るのが一番だろうと、紐解くことにした。ちょうど私が『こ...
私の現代海外ミステリへ出発はあまりいいものとは云えなかった。気を取り直して今度はもう一方の海外ミステリ出版の老舗、早川書房の本に手を着けることにした。今度は失敗しないようにとどれにしようと迷ったが、やはりここは『このミス』に頼るのが一番だろうと、紐解くことにした。ちょうど私が『このミス』を買い出したのが’94年版で、なんとこの年は過去の『このミス』の国内・海外のランキング20位までが載せられていたので、それを参考にすることとした。で、『このミス』第1号の1988年の1位の作品が『夢果つる街』であり、その作家がトレヴェニアンだったのだ。そして彼のハヤカワ文庫の作品がこの『シブミ』である。 この奇妙な題名の作品。実は原題もそのまま“Shibumi”である。そう、これは日本の「シブミ」を体得した殺し屋ニコライ・ヘルが主人公の物語なのだ。この上下巻に分かれた作品は、まずニコライが日本の軍人と碁の名人に育てられ、日本の精神を学ぶところが上巻で描かれる。とにかくこのあたりの日本人の精神までに入り込んだ内容が実に素晴らしく、これは本当に外国人が書いたのかと何度も疑った。特に題名となっている「渋み」の極意についての説明は実に的確だ。ちょっと抜き出してみよう。 「シブミという言葉は、ごくありふれた外見の裏にひそむきわめて洗練されたものを示している。この上なく的確であるが故に目立つ必要がなく、激しく心に迫るが故に美しくある必要がなく、あくまで真実であるが故に現実の物である必要がないことなのだ」 この内容を十全に解釈することはなかなか難しいだろう。しかし何を云わんとしているかは日本人であればそれぞれ理解できるはずだ。私は「侘び・寂び」の精神だと解釈した。 またニコライは日本人の妻を娶り、自宅に庭園を持っている。この庭園とはニコライ自身がこつこつ作っている日本庭園なのだ。この日本庭園に関する作者なりの解釈も素晴らしい。 曰く、1つ1つを捉えてみれば、それは完成しているようには思えないが総体として捉えると見事な調和を醸し出している。 和の心をこれほどまで掘り下げた作家は、数年後クーンツのある作品を読むまで全く出逢ったことなかった。
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上下巻 …悟りを開いた暗殺者なんですよ。←カバー参照。 ”ニコライ・ヘル”シブミ”を体得した恐るべき暗殺者!” 誰? このあらすじ書いたの。 笑える。 でも本は面白いです。 A級のプロットにB級の隠し味。 トレヴェニアンは長い間、謎の作家だったけど、どうや...
上下巻 …悟りを開いた暗殺者なんですよ。←カバー参照。 ”ニコライ・ヘル”シブミ”を体得した恐るべき暗殺者!” 誰? このあらすじ書いたの。 笑える。 でも本は面白いです。 A級のプロットにB級の隠し味。 トレヴェニアンは長い間、謎の作家だったけど、どうやら正体がばれたみたいですね。
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覆面作家として有名なこの作家は、「アイガー・サンクション」「夢果つる街」など、一作ごとに作風が違うのでも有名。 国際的な石油エネルギー会社である「母会社」は、アラブとの友好関係を保つために、イスラエルの報復組織の若者たちを、傘下のCIAに命じてローマ空港で射殺させた。しかし、そ...
覆面作家として有名なこの作家は、「アイガー・サンクション」「夢果つる街」など、一作ごとに作風が違うのでも有名。 国際的な石油エネルギー会社である「母会社」は、アラブとの友好関係を保つために、イスラエルの報復組織の若者たちを、傘下のCIAに命じてローマ空港で射殺させた。しかし、その現場から一人の女性ハンナがバスクに逃げ込んだ。バスクには、ロシア貴族を母に、ドイツ人を父に持ち、囲碁を通じて「シブミ」を自分のバックボーンとして育った、洞窟探検者であり恐るべき暗殺者でもあるニコライ・ヘルがいた。上海で生まれどこの国の市民権も持たないニコライは、岸川将軍との出会いから囲碁と「シブミ」を知り、やがて母の死と岸川将軍の転戦に伴って日本に渡り、囲碁を学ぶ日が続きます。しかし、日本の敗戦と、それに続いて岸川将軍が戦犯として逮捕されたことによって、平安な日々は打ち砕かれた。岸川将軍に「名誉ある死」を与えた彼は、数年の拷問と服役の後暗殺者として蘇った・・・・ 日本と日本人にとっても好意的な作品。しかも、色付けやオリエンタリズムのために「ニッポン」を使っているのではなくて、ほんとに良く知ってるんだろう、と思います。目次はすべて囲碁用語だし、敗戦直後の新橋駅周辺の描写などは、その頃のニュース映像を見るような鮮明さがあります。そこにたむろする人々が飢えながらも誇りを失っていないと言う表現は、日本人としてのプライドを擽りますね。読んでて実にいい気分。その新橋で死んでいった老人の遺品を一生大事に持っているところなど、ニコライに好意を持たずにいられません。 そのほか、各国の民族性に関して鋭い批評が各所に散見し、その中でも米国と米国人に対する批判はかなり強烈で、面白い。報復を果たした後、自らの心の中の海碇を確認し、死を覚悟することで穏やかな心境となるという、とても静かな日本的な終わり方。そのラストの情景には心動かされました。「見るべきほどのことは見つ」って言いそう・・・・
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