ジェロニモ追跡

菊池東太【著】

• 販売会社／発売会社: 草思社
• 発売年月日: 1987/03/05
• JAN: 9784794202680

商品レビュー

2023/07/10

カメラマンの著者が「遺族に会い、本当のジェロニモとはどんな人物だったのか」を探る冒険ルポルタージュ。著者の現在の肩書きもカメラマンであるが、なかなか文章が良く、一気に読める面白さがある。

アパッチの取材で最初に保留地を訪ねた時は撮影などを全て拒否された。二回目の時は「部族の歴史」を勉強しておいて、それを披露した。すると全ての取材が許可された48

セミノール族ほフォード大統領の時代にやっと講和条約を結んだ。しかし一部のバンド（ミコスキー）はいまだ（1987）に闘争中56

ヨーロッパから来た人々に食料を援助した先住民は、軒を貸して母屋を取られた80

ティズウィン-酒文化が無いと思われる先住民では珍しく、アパッチで造られるトウモロコシ由来の酒。オレンジシャーベットのような見た目。ジェロニモも飲んだ84

アパッチては「魚でを食べると病気になる」と言う言い伝えがある。ナバホで取材したとき著者は自分用に魚をさばいたら、周りのナバホ族が物珍しそうに寄ってきた。しかし内臓処理の段で、みんな鼻をつまんだ。近くにいた猫に内臓をやると、猫も逃げて行った106

ジェロニモは頭がよかった。無謀な戦いかたをさず、形勢不利と判断するとすぐに降伏。身に危険を感じれば期を見てすぐに逃亡した。交渉の時は必ず地の利があり、武装する部下に取り囲ませた場所でおこなった132

ジェロニモについて取材した人と答えた人が取材後まもなく亡くなることがあった。それ以来「ジェロニモについて語ると祟りが起きる」ということが信じられるようになった。そのため著者の取材は困難を極めた140

ジェロニモは四度脱走するが、最終的に戦争捕虜となり一生を過ごす178

ジェロニモに会った人の話では、彼は残忍な男ではなく、普通の老人だった。冗談好きで酒飲みの愛すべき人柄。その最期も酔っぱらって道で寝て、肺炎になって死んだ198

ジェロニモの孫（ヴィーダ・ジェロニモ）におそらく世界で最初で最期にインタビュー出来た。その理由は父がインタビューを断っていたから。そして著者のインタビューを受けた理由の一つは、著者が彼女と同じモンゴロイド黄色人種だから。
彼女はジェロニモの本名を口にしない。それは部族の掟で死者の本名は口にするべきでないから224

ジェロニモが最期に殺されなかったのは、家族を殺したメキシコには戦いを挑んだ（この時メキシコ側から「ジェロニモ」と名付けられ恐れられた）が、アメリカには挑まなかった（逃走劇を行った）のと、案外憎めない男で人気があったから248