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とはずがたり(上) 講談社学術文庫
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とはずがたり(上) 講談社学術文庫

次田香澄【訳注】

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 講談社
発売年月日 1987/07/10
JAN 9784061587953

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2024/11/01
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※このレビューにはネタバレを含みます

全体的に暴露本みたいですが、歴史好きな私には面白かった。南北朝時代に繋がる歴史の始まりの頃で、その頃の朝廷での政治的なやりとりも、二条の観察眼によって描かれています。 人物の没年など意図的に変えられているようですが、どうもそれにも意味があるようです(『後深草院二条』)。また、出来事の年時や時間的間隔も操作されているようですが、物語を効果的に運ぶためのようで、彼女がかなり聡明で才能があったともいえそうです。 いわば、実際にあったことを再構成して効果的に自分の伝えたいことを伝えた、と言えますかね。 ん?伝えたいこととは? 前に読んだ『後深草院二条』では、歌詠みの家に生まれた自分の歌を残すことも目的にあったのでは、というようなことが書かれていたのですが、それだけだったら、こんなに赤裸々に書かないよなぁ、とも思います。 下巻にまだ続きがあるので、読んでから考えよう。 二条は高貴な出自であり、きらびやかな後宮に生き、高貴な人々に囲まれて、もてはやされましたが、あまり幸せではない、と言っているようです。出家への願いが所々顔を出しますし。父母は早くに亡くなり、後見の祖父とはうまく行かず、院はじめ男性には意思とは関係なく契らされることも。しかも、院は二条に他の女性との手引きをさせられたり、と滅茶苦茶です。初恋の人雪の曙とはまっとうな恋愛のように見えるけど…。この関係の記述がなかったら、荒んでいてちょっと読むのがつらいかも。 ただ、男どもにいいように翻弄されているなら気の毒なだけです。けれど、有明の月とは、関係を突っぱねることも容易にできる状況なのに、院に隠れていそいそと彼のもとにいって情事を重ねているようなので、やっぱり、本人がこの不幸を呼び寄せたところはあるのでしょう。 他の後宮の女性たちのようにうまくかわしたり、身を守ったり、出家してしまえばいいとも思ったりします。でも、本人は名家の出というプライドがあり、華やかなことに魅力を感じる。なのにしっかりした後見が無く、立場が不安定。そんなところにつけこまれた面もあったかな、と思います。 彼女の不幸に関して一番同情したのは、彼女の出産、子供との別離に関する場面です。生んだばかりの女の子と引き離されてしまうところはさすがに可哀想で。二人産んで、どちらも手元に置けないのですから気の毒です。 下巻もおもしろそうですね。

Posted by ブクログ

2022/03/10

おもっっっしろい。 夢中になって読む古典作品に久々に行き当たった。 平安女流文学とは一線を画す読み心地で、次の展開が気になって、ページを捲る手が止まらない。 男性への愛憎が綿々と綴られるところは『蜻蛉日記』に似ていなくもないけれど、みずからの不貞(だよね?)や院の乱倫ぶりをこうも...

おもっっっしろい。 夢中になって読む古典作品に久々に行き当たった。 平安女流文学とは一線を画す読み心地で、次の展開が気になって、ページを捲る手が止まらない。 男性への愛憎が綿々と綴られるところは『蜻蛉日記』に似ていなくもないけれど、みずからの不貞(だよね?)や院の乱倫ぶりをこうも露骨に記して臆すことがないっていうのは、どういう心情なんだろう?どうしてこれを書こうと思ったのか… 現代だったら暴露本にあたる内容だけれど、瀬戸内寂聴さんに近いものがあるのかな(とはず…の方が激しいけど)。 とすると、自分の生き様に何か文学的なものを感じていたというか、書き残すべき何かを感じていた?あるいは書き残さずにはいられない文学的衝動があった? それにしても、宮廷の醜聞を包みも隠しもしなさすぎというくらい露骨に書いている一方で、一人称視点だからこその、何を書かずに済ませてるんだろうミステリーが差し込まれてきて、ますます興味深い。 いやぁ、すごいな、これ。 この先、後深草院、雪の曙、有明の月、大殿に亀山院まで絡んでくるらしい。一体、どうなってしまうのやら。下巻が楽しみ。

Posted by ブクログ

2015/11/08

高校のときの古文の授業があまりにも退屈で、それ以来古文なんて読む気しなかった。だけど偶然この本の内容を何かで読んだとき、一気に引き込まれた。 「レイプ」「二股」「妊婦プレイ」「ストーカー被害」「コスプレ」「愛人に別の女とのセックスを見せつけて興奮」… これ、ライトノベルの話じゃな...

高校のときの古文の授業があまりにも退屈で、それ以来古文なんて読む気しなかった。だけど偶然この本の内容を何かで読んだとき、一気に引き込まれた。 「レイプ」「二股」「妊婦プレイ」「ストーカー被害」「コスプレ」「愛人に別の女とのセックスを見せつけて興奮」… これ、ライトノベルの話じゃないよ。700年前の日本で書かれた、れっきとした“古典文学”。 でも、内容はもちろん、それだけじゃない。 作者は早くに生みの母を亡くし、権力争い熾烈な父と、時の最高権力者の院との間の黙契により、14歳で院に処女を奪われる。 その父もその後すぐに早世し、作者は天涯孤独となり、まだ十代の彼女は疾風怒濤のごとく、人間の欲望の坩堝にさらされる。 院は男女関係としてだけでなく、自分の後見人でもあり、女性として見限られることが即ち生活のすべを失うという外的な複雑さに加え、彼女自身の権勢欲、プライド、そして恋愛感情と性的欲求がくっついたり離れたりといった彼女の内的な複雑さが絡み合う。 そのためだろうか、作者の行動基準は「自分の感情に従っているかどうか」この一点だ。 他人の言動がどうとか、他人にどう思われるかなんて、端から眼中にない。 だから、いくら院の愛人となった後、幼馴染で相思相愛だった“雪の曙”と逢引しようとも、僧侶で聖職者のはずの“有明の月”にレイプされて、でも、贈られた歌のセンスの良さに惹かれようとも、院に愛人である自分を他の貴族に抱かせるように仕向けられ、拒絶したものの体を奪われ、屈辱や不信と同時に、女としてその男の余韻が忘れられず「わが心ながらおぼつかなく侍りしか」という感情が沸き起ころうとも、彼女にブレはない。 あくまで自分の感情に素直に従った結果だ。 一方で、雪の曙との性に溺れた結果、子を授かり、生まれた女の子を抱いたその途端に手から離され生き別れになったとき、「人知れぬ音をのみ袖に包みて(誰にも聞こえないように顔を袖で覆って声を殺して泣いて)」という描写は、現代人の読者であっても感性に強く響くものだ。 私は男なので、作中で縷々と紡ぎ出される彼女の感情をすぐに頭で理解はできないが、いわば心理小説を読み進めるような(もちろん仏文学のような完成度は望むべくも無いが)高揚感を感じた。 一見、日記もののようだけど、作者も実体験のありのままの記録なんて芸のないことをするつもりはなかったようで、源氏物語を手本としつつ、自己の感情に焦点を当てることで作り物の感情描写を排した“リアルな源氏物語”を書こうとしたように思われ、それがこの作品の文学的香気を高める結果となったのだろう。 機会あれば、この物語の解説を荻野文子先生から聞いてみたい。 (2013/1/25)

Posted by ブクログ

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