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二人の母 フランス書院文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | フランス書院 |
発売年月日 | 1986/05/01 |
JAN | 9784829600535 |
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二人の母
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対抗する2人の母から見た溺愛の息子
義母と実母という2人の母をヒロインに据える作品が数多く上梓されてきた、ある意味ではフランス書院文庫における母子相姦の歴史の鏑矢に近い1986年の作品において、母からの視点で交互に描かれていく作品を紡ぎ出したのは特筆すべきことであろう。1人ヒロインによる一人称で執筆された作品こそ後...
義母と実母という2人の母をヒロインに据える作品が数多く上梓されてきた、ある意味ではフランス書院文庫における母子相姦の歴史の鏑矢に近い1986年の作品において、母からの視点で交互に描かれていく作品を紡ぎ出したのは特筆すべきことであろう。1人ヒロインによる一人称で執筆された作品こそ後に幾つかあるものの、2人のヒロインで交互に描かれた作品が本作の他にどれだけあるだろうか。後の主流にはなり得なかったかもしれないが、だからこそ官能小説の幅の広さと奥行きの深さを改めて教えてくれる作品の1つだという思いが沸いてくる。 義母【季里子】32歳 実母【彩子】 37歳 実父と離婚した後に再婚した彩子。その実父と結婚したものの今は未亡人の季里子。17歳の主人公たる息子から見れば年の離れた姉のように言えなくもない年齢差の若い母である。離婚時の約束として彩子は息子と逢えないことになっている。くだけた文体の季里子に対して敬語で綴られる彩子。2人の違いを判らしめるシンプルかつダイレクトな手法である。 息子との距離が近づき、迫られ、背徳への慄きから拒むも昂らされては遂に受け入れてしまう経緯から禁忌を自覚しつつも抗えず、次第に溺れていくまでがそれぞれのシチュエーションで交互に描かれていく。他方の母はこうだった、こんなことをしてくれた、などと告げる息子の言葉が起点となっており、互いに距離を置いているからこそ姿見ぬ相手への疑心暗鬼が積極さを生む要因になっている。息子の心情が読み取れない(描かれない)ことから探りを入れながらの推測を繰り返す2人の母なのである。 また、主人公とは恋仲と思しき同級生【亜沙美】の存在が2人の母にさらなる影響を与える。主人公自身は亜沙美よりも2人の母にぞっこんなところはあるのだが、それによって相手にしてもらえない亜沙美が関心を引こうとこれ見よがしな態度をとる。しかし、その言動によって(亜沙美を通して)互いの母の存在が浮き彫りとなり、さらに嫉妬の炎が燃え上がることになっている。2人の母が互いに相手を強く意識し、互いに嫉妬するための誘引剤かつ起爆剤として息子に加えて亜沙美も効果的に動かすのはさすがの筆致と言える。 まさか息子が他方の母と……と積もり積もっていた疑念が最終的には完全に発覚することで迎える悲劇は当時の定番的な幕の引き方ではあるが、情念を燃え上がらせた母がとった行為であるならば不自然とも言い切れない結末であろう。 余談ながら当時は作者自身の筆による「あとがき」があったようで、『特別付録』と題した今後の作風への決意表明のような文面が1頁半に渡って収録されている。
DSK