火の鳥 手塚治虫漫画全集(10) 手塚治虫漫画全集

手塚治虫(著者)

• 販売会社／発売会社: 講談社
• 発売年月日: 1983/05/01
• JAN: 9784061732100

商品レビュー

2018/04/24

1993.03.08購入

内容紹介(amazon)
放浪の旅を終えて地球に帰りついた宇宙開拓者たちに、地球政府の対応は冷たかった。密入国者として追われるロミとコム、そして追跡者となった牧村の行く手に待つものは…。話題の大河ドラマシリーズ、好評の第10巻!

2013/01/14

ＳＦ色が特に濃い望郷編。ロミとその夫ジョージは地球を捨て、荒れ果てた無人の惑星に移り住み開拓を試みます。しかしジョージが間もなく死んでしまい、ロミはおなかのなかの息子とたった二人で生きていくことに…。種族を絶滅させないために考えた末の結論は、息子を産んだ後コールドスリープし、十数年後成長した息子と子供を作るというもの。そしてまたコールドスリープし、次はまたその息子たちと…。禁断の近親交配をしてでも、亡き夫の遺志を引き継ぎこの星を繁栄させるというロミの決意。エデン17と名付けられたその惑星は数十年もの年月を追うごとに広く開拓されていきます。その後、ロミは惑星に生まれた子供コミュを連れ、懐かしき故郷地球を目指します。

復活編で登場したロボット・チヒロがロミ達の逃亡を手助けしたり、未来編で争いの元となったムーピー種族が出てきたりと、どんどんキャラがクロスオーバーしていきます。６巻目にして火の鳥という作品の世界観の広さに気付きました。

コムの、ロミへの無条件の愛に涙を誘われました。まだ幼い彼がロミを故郷に送り届けるため、何十億光年も離れた宇宙の端まで旅し、優しい母親も愛するロミもいない冷たい湖の中でたった一人花になってしまうなんて…しかもそれがものすごく綺麗だなんて…。終盤、連絡員牧村がサン・テグジュペリ『星の王子様』の文を読み聞かせる場面があるのですが、純粋なコムを星の王子様に重ね合わせました。
「どうして心を持ってないチヒロがやさしくって　心を持ってる人間がぼくたちを殺そうするんだろう？地球ってわかんない所だなァ」
「ロミ…好きだったんだ。ぼく…ロミが大好きだった。宇宙中の宝物の全部より好きだった」

所持していた角川版が大幅に内容カットされていると知り残念に思っていた所、幸運にも地元図書館に手塚治虫漫画大全集が所蔵されており、読み比べてみました。ロミの息子達が人肉を食べて生き延びる描写、電流が流れる星でのエピソードなどがまるまるカットされています。作者自身作品の書き直しが多いとのことですが、主要登場人物の一人ノルヴァなどは存在自体が無かったものとされています。（ノルヴァは雄雌同体双生児）本編ラストで悲劇的に崩壊してしまったエデン17ですが、ノルヴァの子供達がロケットに乗って新しい星を求め出発したことが、唯一の未来への希望だったと思うのですが…うーむ。内容ボリュームも三分の二程度にカット。これから火の鳥望郷編を初めて読まれるという方は、角川版ではなく復刻オリジナル版、手塚治虫漫画大全集版、もしくは朝日ソノラマ版のいずれかを読まれるべきだと思います。

2008/05/20

僕が初めて読んだ手塚治虫作品は、『火の鳥 異形編』でした。当時小学校低学年だった僕にとっては、『火の鳥』は怖い作品、そして大人の漫画として印象づけられ、その後、そのスケールの大きさに圧倒されながらも読み漁ったものです。

日本人はなぜこんなに漫画が好きなのか、外国人の目には異様にうつるらしい。なぜ外国の人はこれまで漫画を読まずにいたのだろうか。答えの一つは、彼らの国に手塚治虫がいなかったからだ。

1989年2月10日、手塚治虫が亡くなった翌日の朝日新聞・天声人語のこの一節を、彼のライフワークであった『火の鳥』を読み返すたびに思い出します。