日はまた昇る 集英社文庫

アーネスト・ヘミングウェイ(著者)

• 販売会社／発売会社: 集英社
• 発売年月日: 1978/05/01
• JAN: 9784087600292

商品レビュー

2010/05/11

恥ずかしながらはじめてヘミングウェイを読みました。夏の香りと登場人物の複雑な感情が見事に表現されていて、大変すばらしい作品ですね。
男性と女性によって感想がちがってくるのかなと思います。

簡単に書いてしまうと主人公の元彼女（ブレッド）をめぐって3人の男性（コーン、マイク、ロメロ）が右往左往する話です。この3人は人種も性格も地位も違っていて、それを選ぶのは常にブレッドだったりします。まあこのブレッドはモテモテなわけですが、元彼の主人公は戦争で性的不能になりそれが原因で別れているので、簡単な物語ではなく非常に切ない内容であるわけです。主人公は、常に中立でブレッドと友人以上でも最終的な愛には発展しない、男と女の垣根を越えた友情を形成していきます。もちろんそれは障害という壁によってですが。

そんな主人公の前で、まあ〜ブレッドはころころと男性を変えていくわけすが、読んでいて頭にこないのは、ブレットが心に空いた穴を埋める為に動いているのが分かり、穴を埋めることができるのは主人公だけなんだよなと気付くからなんでしょうね。そしてもちろんブレッドは、魅力的な女性なんでしょう。

闘牛のシーンでは、馬、闘牛、去勢された牛が登場しますが、それが登場人物とシンクロし、さらに闘牛士であるロメロが登場する辺りは本当にうまいなぁと妙に納得してしまいました。ねづっちの謎かけのような。

ブレッドは、富、名誉、名声で心の穴を埋めることができたのでしょうか・・・結局、ひとが幸せに出来るのは一人なんでしょうか。

1926年の作品なわけですが、古さを感じることはなく、なるほど名作ですね。

次はまたヘミングウェイにしようかな。