ペルソナ の商品レビュー
数年前に『ピカレスク 太宰治伝』を読んだとき、『ペルソナ 三島由紀夫伝』という作品の存在を知り、ずっと読みたいと思っていました。それが、三島由紀夫生誕100年・没後55年にあたる2025年に中公文庫から復刊され、ようやく読むことができました。本当にうれしい。ありがとうございます。...
数年前に『ピカレスク 太宰治伝』を読んだとき、『ペルソナ 三島由紀夫伝』という作品の存在を知り、ずっと読みたいと思っていました。それが、三島由紀夫生誕100年・没後55年にあたる2025年に中公文庫から復刊され、ようやく読むことができました。本当にうれしい。ありがとうございます。 大正10年11月4日の東京駅、原敬宰相の暗殺から、この評伝は始まります。この暗殺事件が三島由紀夫にどうつながっていくのか。大正、昭和と日本の政治史を官僚という視点から臨場感たっぷりに眺めていくうち、少しずつ彼に近づいていく過程はドキドキしました。特異な環境下で育った子供時代から自決に至るまで、いや、プロローグからエピローグまで、全編興味深く読みました。 『ピカレスク〜』も良かったけど、本書はさらに私の知的好奇心を満たしてくれました。これまでに見聞きしてきた三島由紀夫は、いつも何かに怒っているような、なんだか気難しそうで近寄りがたい、ちょっと特別な、理解しがたいようなイメージでしたが、この本を読んでみれば、大笑いもすれば号泣もし異性に恋もする、作品が非難されれば傷つく、自分となんら変わりない一個の人間が目の前に立ち現れ、なぜか少しホッとしたような気持ちになりました。 自決の瞬間が刻一刻と迫ってくるラストは、胸が張り裂けそうでした。まさに自分もそこにいて目撃していたようで。怖かった。この苦痛、いかばかりか……。 みっちりと濃密な一冊、折に触れて読み返すことになると思います。 この文庫が発売されたのは、2025年の11月下旬。書店で買うとき、「今年が生誕100年・没後55年にあたるなら、もっと早くに出せば良かったのに。なんであと1ヶ月で今年が終わるこの時期に出したんだろう」と思ったのだけど、読了して奥付の日付を見た瞬間、その理由がストンと腑に落ちました。
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平岡家三代のサガを描いた本書は、著者の力のこもった労作である。三島由紀夫のルーツを、祖父・定太郎、父・梓、祖母・夏子といった人物群を通じて掘り下げ、彼の人格形成に決定的な影響を与えた人間関係を立体的に浮かび上がらせている。叙述は巧緻で、読者は一気に読了へと導かれる。 とりわけ興...
平岡家三代のサガを描いた本書は、著者の力のこもった労作である。三島由紀夫のルーツを、祖父・定太郎、父・梓、祖母・夏子といった人物群を通じて掘り下げ、彼の人格形成に決定的な影響を与えた人間関係を立体的に浮かび上がらせている。叙述は巧緻で、読者は一気に読了へと導かれる。 とりわけ興味深いのは、三島の生を時間軸に沿って丹念に追う構成である。それにより、各時期の作品との連関や、その背後にある時代状況が明瞭に照射され、作家としての軌跡が有機的に理解される。ただし、後半の自決へと突き進む過程については、叙述がやや事実の連鎖にとどまり、三島の精神的深層への踏み込みがなお一歩欲しい印象も残る。 私見では、三島はその核心において極めて繊細な感受性を抱えつつ、それを強靭な意思によって制御しようと格闘し続けた人物であったのではないか。その緊張が、やがて極端な行動として噴出したとも読める。 また、平岡家三代の対比の中に、原敬、岸信介、長岡といった同時代の成功者を配置する手法も見事である。個の内面と時代の構造とを交差させることで、本書は単なる評伝を超え、近代日本の一断面を照らし出している。
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いま、『ペルソナ』という三島由紀夫=平岡公威一家の歴史探訪に即した本を読んでいる。猪瀬直樹の書いた大長編であるが非常に面白い。読み応えがあるのだ。三島由紀夫を書いた本は数多あるが、どうしても難解な文章に突き当たる。殊更に難しく書いた評論が多いなかで『ペルソナ』は総じて難解なところ...
いま、『ペルソナ』という三島由紀夫=平岡公威一家の歴史探訪に即した本を読んでいる。猪瀬直樹の書いた大長編であるが非常に面白い。読み応えがあるのだ。三島由紀夫を書いた本は数多あるが、どうしても難解な文章に突き当たる。殊更に難しく書いた評論が多いなかで『ペルソナ』は総じて難解なところはないし、大げさな物言いもない。 明快で説得力のある筆致が、読み進む内に水のような力が、ひとつひとつ納得するに足りる文章の行間にみられるのだ。三島由紀夫の本を読む時、書かれている内容に、一体何を言おうとしてるのか? 理解に苦しむ箇所が随所にみられる。 それは、私の理解が浅く薄っぺらなものからきているのか? 若い頃から今までそう思っていたのだが、彼の生い立ち、幼年期、中高生期等を知り得なければ理解できないことが判る。これだけ見事に、詳細緻密にしてユーモラスも混じえて大長編を書き上げた著者には敬服する。 この本が書かれたのは2001年だ。24年経っている。当時、本のタイトルくらいは目にしたと思うが買わずにいた。いま、72歳で読んでいることに『遅れてきた青年』を感じるのだ。
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