こだま標本箱 の商品レビュー
常葉百絵(ときわ ももえ)は、5歳の息子・太貴(たいき)と暮らすシングルマザー。太貴は4歳の時に「神隠し」に遭ったことがあり、6日後に発見された。 大きなお城にいたらお父さんが来て助けてくれたなどと空想のようなことを話すので百絵は戸惑っている。写真家だった夫の誠太(せいた)は闘病...
常葉百絵(ときわ ももえ)は、5歳の息子・太貴(たいき)と暮らすシングルマザー。太貴は4歳の時に「神隠し」に遭ったことがあり、6日後に発見された。 大きなお城にいたらお父さんが来て助けてくれたなどと空想のようなことを話すので百絵は戸惑っている。写真家だった夫の誠太(せいた)は闘病の末にすでに亡くなっているのだ。 百絵は『喫茶こだま』に採用されたつもりだったのに、オーナーの賀見社真夜(かみやしろ しんや)から、自分の秘書を兼任するよう言われた。 賀見社の名刺には「伝説収集家」とある。伝説を集め、買い取って「標本」にするのである。店の中にはそんな「標本」がたくさん飾られていた。 開けてはいけない箱、埋めてはいけない井戸、切ってはいけない木、踏切の幽霊・・・入り口はホラーによくありそうなキーワードだが、怖がらせのお話ではない。 言い伝えの元をたどっていけば、始まりには、人と人とのつながりの物語があった。 遠い昔に仲の良かったふたりの少女たち。病弱だった姉に対する負い目と思慕を抱えて生きる老婦人。木に守られた少年たち。踏切のあちらとこちらに立つ少年少女。 「標本」という言葉からは不思議なイメージが浮かんでくる。 古い薬品やほこりのにおい、あるいは乾燥した植物の香りがたちのぼるような感じがする。 それがかつて確かに生きていた証拠でもあり、失われた命の物語を思い出す手がかりのためにそこにあるのかもしれない。
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伝説蒐集家であり「喫茶店こだま」のオーナーでもある加賀社に店員として雇われた百絵は秘書として蒐集の手伝いもする何とも不思議な読み物。ケサランパサランや古井戸や二本の木や踏切…意外と色んな噂や怪談みたいな話などはあちこちにあるけど元ネタを探すのは大変。ただの蒐集家の話かと思いきや実...
伝説蒐集家であり「喫茶店こだま」のオーナーでもある加賀社に店員として雇われた百絵は秘書として蒐集の手伝いもする何とも不思議な読み物。ケサランパサランや古井戸や二本の木や踏切…意外と色んな噂や怪談みたいな話などはあちこちにあるけど元ネタを探すのは大変。ただの蒐集家の話かと思いきや実は過去の神隠しや不穏な事件も絡んでいたりで重たい内容もある。でも全然怖くないし不思議なお話でまとてめくれてるので読んでてほっとできる。言い伝えなどは昔の人の知恵でもあると思うと感慨深い。不思議なものにはそれぞれ物語があるのかも。
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「喫茶こだま」で働く百絵と、伝説収集家でもあるオーナー賀見社の話。 伝説収集家というワードがまず興味をそそる。 あまり掘り下げた話ではなくてふわっとした感じ。全体的にほんわかした雰囲気で読みやすかったかな。
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路地裏にひっそりとたたずむ「喫茶こだま」で 働き始めた百絵。雇い主は古くからの言い伝えを 知らbれう伝説収集家。彼との出会いが、大切な人を 失った百絵の未来を変えていく…。奇跡に満ちた 救いの物語。
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※このレビューにはネタバレを含みます
とき、時間に関わりのある小説が本当に素敵だなと思いました。今作は、古くから今まで時を経て伝わる伝説やものを調べていく物語。 息子が神隠しにあったのかもしれない…そんな百絵が「喫茶こだま」で働きはじめて、オーナーの伝説収集の手伝いを始めるが、百絵は非科学的な出来事は信じられない、そう思ってた。だから息子が亡くなったはずの父親に会ったもいう発言も信じることができない。しかし物語が進むにつれもしかすると…と考えが変わり、百絵は大貴を誠太が守ってくれたと思うようになる。1話1話ももちろん魅力的で面白いのですが、やはり物語を通しての百絵と大貴の物語が印象的です。 また、「水を染める色は」が個人的に好きだなと思いました。姉妹の関係性、科学的な事象によって起きた物語。けれど井戸に主は存在していた。信じる気持ちが大切にされたからこそ起きた、温かい物語だと思いました。
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