英雄 の商品レビュー
真保裕一『英雄』朝日文庫。 これまで読んだことのない類のサスペンス小説であった。昭和、平成、令和という時代の流れの中で裸一貫から巨大企業の総帥まで上り詰めた男の人生が描かれる。 警察官がここまで民事にまで積極的に介入することがあるのか、突然現れた非嫡子を巨大企業の経営一族がす...
真保裕一『英雄』朝日文庫。 これまで読んだことのない類のサスペンス小説であった。昭和、平成、令和という時代の流れの中で裸一貫から巨大企業の総帥まで上り詰めた男の人生が描かれる。 警察官がここまで民事にまで積極的に介入することがあるのか、突然現れた非嫡子を巨大企業の経営一族がすんなり受け入れることなど有り得るのかなど、突っ込みどころは多々あるものの、昭和、平成、令和という3つの時代を知る者には面白く読むことが出来た。 昭和には戦後の高度経済成長期という輝かしい時代があった。誰もが家庭など顧みずに馬車馬のように必死に働き、三種の神器と呼ばれる電化製品や車、マイホームを手に入れ、子供たちには充分な教育の機会を与えた。 バブルが弾け、終身雇用、年功序列といったある意味、労働者にとっての保証制度が崩壊し、企業はこぞって非正規労働者を採用する。これが所得の格差を拡大させ、労働者の手取りを激減させた。 これに追い討ちをかけたのが、東日本大震災などの自然災害と新型コロナウイルス感染禍である。以来、日本は長いトンネルに入り、出口を見失っているように思う。 ある日、保土ヶ谷の西口商店街に佇む居酒屋を営む両親に育てられ、食品関係の会社に勤める植松英美の元を刑事が女性弁護士を伴い、訪れる。 英美の実の父親である巨大企業の元会長の南郷英雄が何者かに射殺され、英美にも莫大な遺産の一部が相続されると言うのだ。遺産相続に関する相手側との交渉は女性弁護士が引き受ける代わりに、刑事は南郷英雄を射殺した犯人を明らかにするために英美に南郷一族と話しをして欲しいと依頼する。 英美は実父の関係者に会い、実父が敗戦後に裸一貫から起業し、巨大企業へと成長させた経緯を調べるうちに実父の隠された過去と生き様を知る。そして、実父を射殺した犯人へと辿り着く。 本体価格950円 ★★★★
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