小説作法の奥義 の商品レビュー
阿刀田高著『小説作法の奥義(新潮文庫 ; あ-7-43)』(新潮社) 2025.9発行 2025.11.6読了 阿刀田高氏は1935年生まれの小説家で、長く短編の名手と言われてきた。本作は米寿を目前にして書かれたエッセイ作品のようであるが、最近はもうほとんど短編作品を発表しな...
阿刀田高著『小説作法の奥義(新潮文庫 ; あ-7-43)』(新潮社) 2025.9発行 2025.11.6読了 阿刀田高氏は1935年生まれの小説家で、長く短編の名手と言われてきた。本作は米寿を目前にして書かれたエッセイ作品のようであるが、最近はもうほとんど短編作品を発表しなくなってしまった。 阿刀田高氏が手掛ける作品はほとんどが短編で、長編としては『新トロイア物語』があるくらいである。 私が阿刀田高氏を知ったのは、『眠れなくなる夢十夜』に収録されていた「夢一夜」からだが、それ以来氏の作品をずっと愛好している。 阿刀田高氏は、本作の中で、「昨今は〝私は小説が好きと言うより短編小説が好きなのだ〟と、年老いてわがままをすなおに告白するようになっている」と述べており、長年、疑問に抱いていた阿刀田高氏が長編を書かない理由が分かって嬉しくなった。 本作では小説作法について色々と触れられているが、むしろ私が本作を読んで感じたのは、阿刀田高氏の博覧強記ぶりだ。米寿を目前にしてもなお、はるか昔の出来事を細部にわたって記憶し続けている。興味関心をもって物事を観察し、昔読んだ小説の筋や文章表現さえも頭に留め、そのときに感じた印象や感動すら昨日の出来事のように語ることができる。 小説家としての秘訣を細々とした技法に求めるのは大きな間違いで、結局は持って生まれた才能が物を言うのではないか。私は改めてこの思いを強くした。 確かに、この令和の時代、改めて阿刀田高氏の作品を読み返すと古臭さは否めない。昭和のおじさんおばさん同士の会話のような台詞回しは鼻につくし、モチーフも浅い印象を受ける。だけれども、阿刀田高氏は間違いなく本物だ。でなければショートショートを含めて900編も作品を世に出せない。 阿刀田高氏の新作短編を読むことが叶わないのは残念であるが、今後とも新作エッセイ作品を通して阿刀田高氏と出会えることを願っている。 https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I034251709
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ペダンティズムという言葉をこの本で初めて知る。 「知識をひけらかす」というような意味らしい。 冒頭にある作者の言葉 「さほどのものではない。五十余年執筆を続けた老爺の、人生に対する未練、それを気ままに綴る試みをお許しいただきたい。」に尽きる。 国立国会図書館勤めから作家になっ...
ペダンティズムという言葉をこの本で初めて知る。 「知識をひけらかす」というような意味らしい。 冒頭にある作者の言葉 「さほどのものではない。五十余年執筆を続けた老爺の、人生に対する未練、それを気ままに綴る試みをお許しいただきたい。」に尽きる。 国立国会図書館勤めから作家になった方とのこと、知識を整理して人に伝えるのは得意な事のようで文化や歴史、作家を紹介する作品を多く出しているらしい。※読めてなくてすみません。 最初は作者の幼少期から作家になるまでの間の 作品作りのヒントとなった事柄について綴られている。そこまではとてもよかった。 そこから徐々に自分の著書などの引用が多くなる。各話の生まれる流れの説明 概要をざっと伝えてくれるのは良いのだけれど 本のタイトルからしたら、一体何を読んでるのかわからなくなることが多かった。 図書館勤めの取材力、わかりやすくまとめる力がこの方の強みなのだと思うのですが 親切過ぎる引用の多さがなんとも自著の宣伝でもない、かと言って丸々全編でもない長さを部分的に読むことに抵抗がありました。(作品誕生を説明する上で必要なのかもしれませんが) 奥義というよりエッセイ… 「ペダンティズムをお許しいただきたい」という言葉が少々出てくる。 許してと言われても ペダンティズムが多く、つらかった。 小説を書き始めた頃、自分には立派なテーマ(本の中ではモチーフという言い方をされてる)があるか?という思いから小説は書く気になれなかった、その後ある作品に出会いもっと自由に自分の出来る事を考えていく過程、頭の中のカオスの中に道を見つけ作品を組み立てていく話(この方はきっと膨大な知識量が頭の中のカオスを形成してる) そして「おわりに」の闇彦の話がとても良かった。 作家さんがどう発想していくのか過程をすこしずつ楽しみながら読むには良いのかも
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奥義と言うほどのものではない。国会図書館員が雑文書きから小説家へのというキャリアは興味深い。割と浅いところでネタとして書いている印象。
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900篇超の小説を生み出してきた著者が、これまでどのように小説を書いてきたのかを記した一冊。 豊富な人生経験と読書体験に基づいた、贅沢な小説エッセイといった印象。楽しく読了。 本文中に登場した中島敦やギリシア神話等々興味が出たので積読リストに追加。。
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