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南洋標本館 の商品レビュー

4.2

12件のお客様レビュー

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2025/11/26

舞台が戦前の台湾と戦中のインドネシアということで、非常に興味深く読んだ。 特に台湾では、本当人の思いがよく理解でき私の中にあった失われたピースが埋まった気がした。 しかし物語としては冗長で、理屈っぽく、必ずしも共感出来なかった。その意味でとても残念に思った。

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2025/11/15

日本の台湾統治50年。とても長い。それによって生まれる歪みは、人々を翻弄する。それでも植物学者たろうと生きる陳と琴司。おもしろい。もうちょっと陳の米国での葛藤も読んでみたかった。

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2025/11/02

著者のアガサ・クリスティー賞受賞後第一作。在台日本人と台湾生まれの本島人の男性二人が共に南洋探険と植物学研究を志すも、一方は戦争のために、もう一方は本島人というアイデンティティゆえにそれぞれの壁にぶつかっていく、というストーリー。    物語の展開もさることながら、歴史的背景のデ...

著者のアガサ・クリスティー賞受賞後第一作。在台日本人と台湾生まれの本島人の男性二人が共に南洋探険と植物学研究を志すも、一方は戦争のために、もう一方は本島人というアイデンティティゆえにそれぞれの壁にぶつかっていく、というストーリー。    物語の展開もさることながら、歴史的背景のディティールが現在の研究の水準に拮抗するレベルで精緻に、かつ生彩ある形で書き込まれていて、著者の力量を感じさせる。中でも著者は、在台日本人・琴司のパートよりも、本島人・陳永豊のほうにより焦点を当てていく。陳(台湾語読みで「タン」と読ませる)の実父は台湾民主国のリーダーのひとりで、彼はその父の最期を知る本島人の通訳によって台湾の民族資本の担い手の家にもらわれ、こんどは経済と政治の面で植民地支配の現実と直面させられる。一方で、その陳を救った男は大陸に渡り、国民党の諜報機関の元締めとして陳を抗日戦争に動員しようと画策する。その誘いを断った陳は、アジア太平洋戦争が始まると日本名「永山」を名乗り、インドネシアを支配する日本の軍政府と結びつきながら、研究を継続しようと企てていく――。こうした展開の積み重ねによって、戦時下の中で心ならずも生きるための選択を強いられただろう多くの台湾人たちの姿を浮かび上がらせていく。  琴司のパートよりも、陳の台湾脱出後、アメリカやカナダでの学究生活のことを読みたいと思ってしまったが、それはさすがに要求しすぎかもしれない。

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2025/10/18

前作「時の睡蓮を詰みに」で感動し、待ってました、この作品!もう圧巻!これほんとにフィクションなの?そいでお一人で書いてるの?…凄すぎる。今1番気になる作家さんです!語彙力なくてすみません。日本人必読。やっぱり学校の歴史って公平に教えてないのだなと思う。いやそれはどの国も仕方のない...

前作「時の睡蓮を詰みに」で感動し、待ってました、この作品!もう圧巻!これほんとにフィクションなの?そいでお一人で書いてるの?…凄すぎる。今1番気になる作家さんです!語彙力なくてすみません。日本人必読。やっぱり学校の歴史って公平に教えてないのだなと思う。いやそれはどの国も仕方のないことか…。ただただ戦争は起こらないでほしいと、みんな仲良くしようぜ…と祈るだけのへなちょこ日本人です…。お会いしてみたい。ダ・ヴィンチあたりで特集してもらいたい。そして、個人的に当たりの本はいつも坂野公一さん装幀だ!

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2025/10/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

25/10/13読了 戦中の台湾を舞台にした小説は珍しいのでは。 陳永豊が最終的に得た足場がアメリカでありカナダなことに、彼の国の強さとそれが失われつつありそうな今の世界に思いを馳せてしまう。少なくとも暴力を振るう側、侵略する側には二度と立ちたくないね… らんまんをみていたので研究活動の情景を思い描きやすかった。

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2025/10/11

2025年10月4日図書館から借り出し 2025年10月11日読了 少し前に読んだ楊双子著「台湾漫遊鉄道のふたり」に続いて、日本が植民地統治を行っていた時代の台湾の物語です。台湾で生まれ育った日本人と台湾人の幼少期から植物学者の志を捨てずに生き続けた二人の姿を借りて、日本の過酷...

2025年10月4日図書館から借り出し 2025年10月11日読了 少し前に読んだ楊双子著「台湾漫遊鉄道のふたり」に続いて、日本が植民地統治を行っていた時代の台湾の物語です。台湾で生まれ育った日本人と台湾人の幼少期から植物学者の志を捨てずに生き続けた二人の姿を借りて、日本の過酷な植民地統治を描いています。 日清戦争の結果、日本に割譲された台湾での抵抗活動を鎮圧するため北白川宮が近衛師団を率いて進軍したことを台湾征討と呼んでいたことは知っていましたが、「乙未(いつび)戦争」とも呼ばれていたことはこの本で初めて知りました。初代台湾総督・樺山資紀から続く軍人による統治は過酷を極めていたことが活写されています。さすがに植民地統治がうまくいかず、文官総督で少しは融和的になっても二級国民としての台湾人の扱いは変わりません。 この辺の時代描写は、調べれば調べるほど理不尽、傲慢な統治者日本人に対する怒りのような著者の感情が伝わってきます。同時に、その昔に台湾人の友人から聞かされた過酷な話は、今頃になっておそらくは父母・祖父母から伝え聞いたものであったと思い当たります。 後半の植物学者となってから調査して訪ね歩く南洋統治領での日本人の姿にも著者の怒りは感じるものの、前半の台湾統治の頃の熱量は少し落ちて、やや物足りなく感じます。そこに男女の情愛を混じり込ませるのですが、どうもこの著者はその辺を描くのはあまりお得意ではないようです。 細かな不満はあっても、祖国を占領されて国籍を変えられ、名前を変えられ、それをまた喪失して祖国を追われることがどういうことか。500頁を超えるこの大作は冒頭に触れた「台湾漫遊鉄道のふたり」とはまた違った日本占領時台湾の姿を小説の姿で教えてくれます。読み応えがありました。 台湾は親日国とされていますが、蒋介石がゴロツキのような敗残兵を引き連れて台湾を占領して軍政をひいたものですから、それに比べれば日本統治の方がまだマシだったということで印象が良くなっているのかも知れません。 ちょうどいま、アマゾンで「零日攻撃」という台湾を攻撃する寸前の中国の謀略を描いたドラマが配信されています。日本の極右政治家は、外交的に軍事的にどう対処するのでしょう。

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2025/09/28

全然思った話と違ってびっくりした。 植物学者の話だけど、 これは歴史の話だ。 台湾が日本の統治下にあったと知識としてはあるが、 それがどういうことなのか、考えさせられた。 当時の人々の感情に想いを馳せられる、 これが文学の力なのだと思う。

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2025/09/21

戦時中の出来事は全然知らないので少しずつ知識を深めていきたいと思わせるような小説だった。1週間もかかって読み終えた2人の植物学者のドラマは波瀾万丈でお金があってもこの時代、占領下にあったらなくなってしまう。生きていくのにお金ではなく意志の強さ、情熱が必要でしぶとさもなくてはいけな...

戦時中の出来事は全然知らないので少しずつ知識を深めていきたいと思わせるような小説だった。1週間もかかって読み終えた2人の植物学者のドラマは波瀾万丈でお金があってもこの時代、占領下にあったらなくなってしまう。生きていくのにお金ではなく意志の強さ、情熱が必要でしぶとさもなくてはいけない。すごく考えさせられる内容と分厚さで久々に長く付き合った一冊だった。 でも諦めずに読んでよかったし、途中でやめることができないぐらいに没頭した。

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2025/09/20

戦時中の激動の時代の中で生きた2人の植物学者の話。日本支配時代の台湾のことなんて全然知らなかったし、インドネシア統治のことも、資料や教科書で読むのと、小説で読むのとでは大違い。その時代をリアルに感じられるのが小説の役割だよな…と考えさせられました。陳の激動の人生、最後は幸せだと思...

戦時中の激動の時代の中で生きた2人の植物学者の話。日本支配時代の台湾のことなんて全然知らなかったし、インドネシア統治のことも、資料や教科書で読むのと、小説で読むのとでは大違い。その時代をリアルに感じられるのが小説の役割だよな…と考えさせられました。陳の激動の人生、最後は幸せだと思えたのか…。植物への情熱が生きる原動力となり得たのか。生まれた場所が、時代が違えば、彼はもっと簡単に優秀な学者として世界的に活躍できただろうに。他国を支配する、侵略する、戦争する、その行為の末にどれくらいの人の人生が壊れるのか、思いを巡らせた作品。

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2025/09/16

台湾は2回しか行ったことがないが、とても好きで、これからも何度も行きたいと思っている。 台湾は親日とか言うけど、どうなのか、日本人がそんなこと言っていいのかとは思っていた。 ただ、植民地下で生きた現地の人のことをしみじみ考えることはなかった。 この小説を読んで初めて、植民地で生き...

台湾は2回しか行ったことがないが、とても好きで、これからも何度も行きたいと思っている。 台湾は親日とか言うけど、どうなのか、日本人がそんなこと言っていいのかとは思っていた。 ただ、植民地下で生きた現地の人のことをしみじみ考えることはなかった。 この小説を読んで初めて、植民地で生きるということはこういうことなのかと細かく実感できてとても良かった。 本人にはほとんど意志的ではない波乱万丈の人生の中で、植物学が芯になり、どれほどの苦しい境遇にあっても一筋の道を生きられたことは幸運であった。このようなものがあることは重要なことだった。 それと対比する形の人生を送った琴司。彼は彼なりの苦労をしたとしても、やはり陳よりは相当楽だった。 80年はあまりにも遠いけれど、この小説を読んで考えるに、アジアの国に対する日本人の思いは、相手の国より相当薄いような気がする。いじめっ子はとうに忘れている出来事を、いじめられた子は大人になっても全く忘れられないという関係にも似ているのかもしれない。その時代のことを知る人が双方で全員いなくなった時、どういう形で、どういう思いで歴史の事実は捉えられていくのか。 そうは思いつつ、2人がまた再会して南洋標本館を作るみたいな夢の結末を期待していた自分は、まだまだわかっていないと反省した。 「どうして人はより愚かな存在に惹かれ、低い物を高い所に置いて崇めようとするのか。自分の心に嘘をついてまで愚者を礼賛しつづけるのか?」 165ページ -日本人である僕の三十七年間の幸福は、きみを三十七年間抑圧し、あらゆる不条理と我慢を強いることによって成り立っていたものだ。僕らは、日本の台湾支配は合法的だったと言い、あらゆる苦痛と哀しみを合法化してきた。    494ページ

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