京都の乾物屋さんから教わるお出汁と乾物 の商品レビュー
序論:乾物が紡ぐ、おいしさと笑顔の食卓 本書『京都の乾物屋さんから教わるお出汁と乾物』は、京都の老舗乾物屋「田邊屋」七代目女将・山下由美子氏監修、国際中医師・大友育美氏の料理により、日本の伝統食材である乾物とお出汁の魅力を再発見し、忙しい現代人の食卓に「簡単、おいしい、そして元気...
序論:乾物が紡ぐ、おいしさと笑顔の食卓 本書『京都の乾物屋さんから教わるお出汁と乾物』は、京都の老舗乾物屋「田邊屋」七代目女将・山下由美子氏監修、国際中医師・大友育美氏の料理により、日本の伝統食材である乾物とお出汁の魅力を再発見し、忙しい現代人の食卓に「簡単、おいしい、そして元気になる!」をもたらす一冊である。縄文時代から食されてきた乾物の知恵を活かし、まずは一つの乾物から得意なレシピを持つことで、日々の食事が豊かになり、家族の笑顔が増えることを目指している。 乾物の基本を知る:15種の魅力と手軽な活用法 第1章では、昆布、かつお節、干し椎茸、ひじき、切り干し大根、高野豆腐など、日常で使いやすい15種類の乾物を厳選して紹介。それぞれの特徴、栄養価、選び方、保存方法、正しい戻し方に加え、「白がゆ」「削りたてかつお節わさびごはん」「ひじきの煮物」といったシンプルなレシピを提案し、初心者でも気軽に乾物を使い始められるよう導く。さらに、お湯を注ぐだけの「乾物茶」や「カップで味噌汁」といったクイックレシピも掲載し、乾物の手軽さを強調している。 お出汁を極める:素材選びから定番料理まで 第2章では、和食の魂とも言えるお出汁に焦点を当て、その重要性と素材選びのポイントを解説。真昆布とかつお節を使った基本の出汁のとり方を丁寧に説明し、その出汁を活かした「素のりと豆腐の味噌汁」や「肉じゃが」などの定番料理を紹介する。また、作り置きしておくと便利な「味付き出汁」とその活用レシピ(「ぷるぷる親子どんぶり」「だし巻き卵」など)、さらには昆布やかつお節をそのまま具材として味わう「出汁をとらない出汁料理」や、手軽に作れるおせち料理も提案している。 乾物アレンジ百花繚乱:和洋中に広がる日常レシピ 第3章では、乾物の可能性をさらに広げ、和食の枠を超えた多様なジャンルの日常料理を紹介する。干し椎茸を使った「ミートソーススパゲッティ」や「ルーローハン」、ひじき入りの「マッシュポテト」、切り干し大根とアボカドの「カレーマヨサラダ」、車麩で作る「玉ねぎスープ」や「唐揚げ」、高野豆腐の「味噌そぼろ生春巻」など、乾物のうまみや食感を活かした斬新なアイデアが満載。これにより、乾物が日々の食卓で飽きることなく楽しめる万能食材であることを示している。 乾物の奥深き世界:歴史と文化を探る 本書に散りばめられたコラムでは、乾物の背景にある豊かな歴史や文化を紹介している。昆布が北前船によって関西で食文化として花開き、かつお節が江戸時代に製法を発展させ縁起物ともなった歴史。鹿児島県枕崎市での本枯節の丁寧な製造工程。京都・錦市場の老舗「田邊屋」が長年にわたり料理人や家庭の食を支えてきた物語。そして、「よろこんぶ(昆布)」や「勝男武士(かつお節)」のように、乾物がおめでたい名前で呼ばれ、献上品や伝統行事に用いられてきた縁起物としての側面にも光を当てる。 乾物使いこなし術:保存法から調理のコツまで 乾物を日常的に上手に活用するための実用的な知識も提供される。乾物は直射日光、高温多湿、強いにおいを避け、冷暗所で保存することが基本であり、季節や環境によっては冷蔵庫保存が推奨される。また、第1章で紹介される「煮物をおいしく作るコツ」では、調味料を入れる順番(甘味から塩味へ)や、味付けの濃さの調整方法、味見のタイミングなど、初心者でも失敗しにくい具体的なポイントを解説。レシピの分量表記などの基本的な約束事も明記し、読者がスムーズに調理に取り組めるよう配慮されている。 結論:乾物と共に始める、豊かで健やかな食生活 本書は、乾物初心者でも無理なく始められる「一乾物一レシピ」というステップを提案し、使い慣れることで広がるアレンジの楽しさや、乾物が持つ栄養価の高さを伝える。和食のみならず洋食やエスニック料理にも応用可能な乾物の万能性を活かすことで、現代の忙しい生活の中でも手軽においしく、そして健康的な食生活を実現できることを示す。乾物という古くて新しい食材を通じて、日々の食卓に豊かさと笑顔をもたらすための知恵とアイデアが詰まった一冊である。
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