アメリカ の商品レビュー
本書は、巨大で多様な国家アメリカ合衆国を地誌学の視点から深く理解することを目指す。地域という枠組みを踏まえ、自然環境、歴史、人々、農村・都市、産業などを包括的に解説。クリーンエネルギーや自動運転など近年の変化も考慮。 アメリカ地誌の課題として、地域的多様性の認識、アメリカ的等質...
本書は、巨大で多様な国家アメリカ合衆国を地誌学の視点から深く理解することを目指す。地域という枠組みを踏まえ、自然環境、歴史、人々、農村・都市、産業などを包括的に解説。クリーンエネルギーや自動運転など近年の変化も考慮。 アメリカ地誌の課題として、地域的多様性の認識、アメリカ的等質性を促す力の理解、多様な地域が関連する複合体としての全体像把握、グローバル化における地域変化の理解を挙げる。本書はテーマ重視法を採用。 自然環境は極めて多様。東部の海岸平野、アパラチア山脈、内陸低地、西部のロッキー山脈や乾燥地帯など地形は変化に富む。気候も東西(湿潤/乾燥)南北で異なり、植生も森林から草原まで多様。地震、ハリケーン、竜巻などの自然災害も頻発。環境保全と開発の緊張もテーマ。 大陸国家の形成は、先住民の世界から始まり、ヨーロッパ人植民(ニューイングランド、中部、南部)、領土拡大を経て進んだ。河川水運(蒸気船、運河)、鉄道、航空交通の発達が国土開発と経済発展、都市形成(シカゴ等)を支えた。 多様な人々、特に移民とエスニック集団がアメリカ社会を形成。都市のエスニックタウン形成と変遷、同化プロセス、アーミッシュのような伝統維持集団、近年のアジア系・ヒスパニック系移民増加による人種構成変化を解説。 農業は大規模・機械化されたアメリカ型農業が特徴。コーンベルトなど地域分化が見られたが、アグリビジネスの台頭(垂直・水平統合、契約栽培)や技術革新で変化。食肉産業も地理的に変遷。カリフォルニアのワイン等、地域特化も見られる。持続可能性(労働力、遺伝子組換え、余剰穀物等)が課題。 産業構造は、製造業中心からサービス業中心へ移行(脱工業化)。ラストベルトと呼ばれる製造業衰退地域と、サンベルトと呼ばれる成長地域がある。近年はシリコンバレー等ハイテク産業が経済を牽引、移民技術者の役割も大きい。 都市はグリッド状道路や高層ビルが特徴。都心・インナーシティ・郊外という構造を持つ。郊外化が進み、都心衰退やスプロール現象、エッジシティが出現。エスニックタウンも変化。環境問題や社会的な分離・貧困も都市の課題。グローバル都市論も紹介。 アメリカ的生活・文化は、消費文化(モール、クレカ)、宗教の多様性と社会的役割(メガチャーチ)、移民文化が融合した食文化、地域に根差したスポーツ文化などが特徴。 人口移動では南部・西部への転入超過(スノーバード等)が顕著。多文化社会はアジア系・ヒスパニック系の増加でさらに進展。グローバル化の中、アメリカ発の技術・文化が普及する一方、世界の文化が集積する場でもある。ブラジル等との比較を通じ、アメリカの地理的特徴を相対化する。
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