社会運動は何を行うのか の商品レビュー
社会運動の「行為」への着目: 従来の社会運動研究が組織や主体に焦点を当ててきたのに対し、本書は社会運動における具体的な「行為」そのものに焦点を当て、その行為がどのように行われるのかを詳細に記述・分析することを目指している。 行為論の構築への試み: 社会運動を行為論として捉え、その...
社会運動の「行為」への着目: 従来の社会運動研究が組織や主体に焦点を当ててきたのに対し、本書は社会運動における具体的な「行為」そのものに焦点を当て、その行為がどのように行われるのかを詳細に記述・分析することを目指している。 行為論の構築への試み: 社会運動を行為論として捉え、その行為の構造やダイナミクス、そしてそれに影響を与える要因を明らかにしようとしている。 地理的・社会的な環境の重要性: 社会運動の行為は、その行われる地理的・社会的な環境に大きく影響されると指摘している。特に、デモ行進や集会における場所、空間、そしてそこに存在する施設やインフラなどが、行為の配置や展開、規模に影響を与えることを事例を通して示している。 時間的要因の考慮: 社会運動の行為は、時間的な変化によってもその様相を変えることを示唆しており、時間的要因を考慮することの重要性を強調している。 具体的な事例に基づく分析: 本書では、シアトルWTO閣僚会議、コペンハーゲンCop15、北海道洞爺湖・九州沖縄G8サミット、そして2015年の反安保法制抗議集会とメーデー中央大会といった具体的な社会運動の事例を詳細に記述・分析し、上記のテーマを検証している。 デモ行進: デモ行進の「合流」や「方向」といった特徴が地理的環境によってどのように影響されるかを分析している。また、個人の行動が集団的な行動へと「拡散」し、そして再び集合するダイナミクスにも焦点を当てている。 集会: 集会の内部構成や参加者の変化をビッグデータを活用して分析し、そのダイナミクスを明らかにしようとしている。 社会センターなどの役割: 社会運動を支援する「自治区」や社会センターといった空間が、運動行為の配置や展開に大きな影響を与えることを指摘している。 ビッグデータの活用: モバイル空間統計などのビッグデータを活用し、これまでの研究では捉えきれなかった大規模な集会の参加者の時間的・年齢別・性別構成などを詳細に記述することで、運動行為の理解を深める試みを行っている。 記述の正確性と客観性の追求: 運動行為は、個人的な経験談や印象論、メディアによる報道では正確に記述されてこなかったと指摘し、対象をしっかりと記述することの重要性を強調している。Googleマップやモバイル空間統計などのツールを活用することで、より客観的で詳細な運動行為の記述を可能にしている。 研究の基礎としての記述の重要性: 本書で示されている記述の方法論は、様々な事例に適用可能であり、今後の研究を拡大していく上で欠かせない基礎となることを示唆している。
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