山東京伝研究 の商品レビュー
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京伝像の再構築 本書は、従来の京伝研究において曲亭馬琴の『伊波伝毛乃記』などに依拠し、誤解や虚偽が含まれていた京伝の人物像を、史料に基づいて丁寧に検証し、新たな視点で再構築している 馬琴による中傷的な記述を批判的に検討し、京伝を「馬琴の呪縛」から解放することを目指している点が特に評価できる 京伝の生涯に掛けて多才で精力的な創作活動や人間性を、詳らかに描き出す 京伝の多岐にわたる創作(黄表紙、洒落本、読本、合巻など)が網羅・詳述され、各ジャンルにおける代表作の魅力と意義を解説。『江戸生艶気樺焼』や『曙草紙』など、京伝の作品の多様性と質の高さを強調し、単なる量産作家ではなく、各ジャンルで傑作を生み出した点が評価できる 特に、京伝の滑稽さと社会風刺の鋭さが、江戸庶民文化の核心を捉えていると論じられている 京伝の活動が、寛政の改革や出版統制といった時代背景と結びつけて描かれ、京伝が手鎖50日の刑を受けた背景や、遊里文化との深い関わりが詳細に記述され、当時の江戸の文化や社会のダイナミズムを浮き彫りにしている京伝の「京屋」での商業活動や「京伝勘定」の逸話など、彼の通人としての側面も生き生きと描かれて親しみやすい 馬琴との関係性に重点を置きすぎるあまり、他の同時代作家(例:大田南畝や十返舎一九)との比較がやや手薄であるものの、京伝の多面的な魅力と江戸文化の活気を生き生きと伝える優れた評伝
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