非対称競争下における競争戦略 の商品レビュー

重谷陽一(著者)

2025/09/12

「非対称競争」における後発企業は、先行者の参入阻止行動を自制させないと「ビジネスを持続できない」。後発企業の取るべき立ち振る舞いを、シェリングの抑止の概念も引用しながら、シンプルな理論を軸に議論が展開されていて面白い。
2000年代の新規参入会社と昨今のLCCは何が違ったのか、経営資源の豊かさ(ここでいう羽田発着枠)が必ずしも戦略的優位につながる訳ではない、というのは重要な視座を示してくれてはいまいか。

2025/03/30

1. 研究の背景
- 1978年の米国における航空規制緩和により、低価格航空会社 (LCC) の出現が加速。
- サウスウエスト航空が開発したビジネスモデル（単一機材、短距離運航、低価格片道運賃など）が欧州やアジアにも影響を与えた。
- 日本では1997年以降、航空市場に新規参入が許可され、多くのLCCが誕生。

2. 日本の航空市場の変遷
- 1990年代後半から2000年代初頭にかけて、日本航空（JAL）や全日本空輸（ANA）が市場を支配していた。
- 新規参入のLCCには羽田空港の発着枠が与えられ、競争条件が有利だった。

3. 非対称競争の定義
- 先発企業と後発企業間の競争において、先発企業が持つ圧倒的な競争力を「非対称競争」と定義。
- 先発企業は価格競争を通じて後発企業を市場から排除することが可能。

4. 研究の目的
- 2000年代初頭と2010年代の新規参入航空会社の戦略を比較し、非対称競争下における後発企業の競争戦略を探求。
- LCCのビジネスモデルの進化を考察し、今後の課題を抽出。

5. LCCのビジネスモデル
- LCCは主に「短距離路線を直行便で運航する」ことに特化し、コストを削減。
- サウスウエストモデルを踏襲する航空会社が多く存在し、その成功事例も多数。

6. オペレーション戦略
- LCCのオペレーション戦略は低コスト実現のための手法に重点を置く。
- 顧客満足と再購買意図の向上を図るための戦略が求められている。

7. プライシング戦略
- LCCの価格設定は競争相手の動向に左右されやすく、価格攻勢が効果を発揮する場面が多い。
- 先発企業の参入阻止行動に対抗するためのプライシング戦略が重要。

8. 中長距離路線への挑戦
- LCCは短距離路線から中長距離路線への進出を試みているが、コスト優位性の発揮が難しい。
- 新技術や機材の進展が中長距離LCCの成立要件に影響を与える。

9. 先発企業の戦略
- 先発企業は後発企業に対する参入阻止行動を取ることが多く、競争環境が厳しい。
- 先発企業が持つブランド力や技術力の影響が後発企業にとっての課題となる。

10. 結論と今後の研究課題
- LCCのビジネスモデルは今後も進化を続けるが、競争環境の変化に適応する必要がある。
- 各国の航空市場の動向や新たなビジネスモデルの模索が今後の研究課題として挙げられる。