行動経済学で「未知のワクチン」に向き合う の商品レビュー
【スピードが求められる危機対応で、科学的知見はどう貢献できるのかを深く考えされられた一冊】 本書は、2020年初頭に突如世界を襲った新型コロナウイルス感染症、その中でのワクチン導入、接種をめぐる様々な議論や葛藤、刻々と変化するウイルスの性質やワクチンの効果に、様々に立場・専門の...
【スピードが求められる危機対応で、科学的知見はどう貢献できるのかを深く考えされられた一冊】 本書は、2020年初頭に突如世界を襲った新型コロナウイルス感染症、その中でのワクチン導入、接種をめぐる様々な議論や葛藤、刻々と変化するウイルスの性質やワクチンの効果に、様々に立場・専門の異なる研究者たちや政策現場、そして私たちがどう向き合ったかを描きつつ、将来の危機にどう備えるべきかを考えた書籍。 著者の3名は、実際に最前線でコロナワクチンやコロナ対応に関する様々な研究を行い、有識者として政府の会議に参加して政策決定の場にも関与してきた。ワクチン導入と当時の社会の状況、政策現場での議論等々、非常に臨場感あふれる筆致で語られる。 パンデミックの中で、ウイルスは変異を繰り返し、ワクチンの効能も幾度も変化した。 こうした不透明な状況に、著者らは「行動経済学」を武器に対峙し、接種勧奨に関するナッジ・メッセージの開発だけで、接種が進む中での政策のあり方を再検討、接種者・非接種者の分断など社会への影響も議論し続けている。 行動経済学、感染症学・ワクチンなどに関する基礎知識も非常にわかりやすく解説されているので、知識ゼロからでも学びの多い一冊だと思う。 著者らの研究とその実践を紹介するパート、政策現場での議論を追いかけてまとめるパート、著者3人が当時を振り返りつつ議論を行うパートの3つの部分で構成されていて、多角的に当時の経験と教訓を知ることができる。 危機発生時には、時間が限られた不確実な状況で、それでも政策対応を進めていかなければならない。そこで、専門家や科学的な知見はどう貢献できるのか。近年EBPM(エビデンスに基づく政策立案)が注目されているが、危機対応で科学的な知見を活用するというのは、本当に難しいと、本書を読んで強く感じた。明確な妙案はまだまだなのかなという気もするが、改めてそのことに気付かせてくれた一冊だった。
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