罪なくして(下) の商品レビュー
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探偵小説や警察小説には、完全無欠だったり良くも悪くも癖が強かったりといった主人公が多く登場するものだが、この作品の主人公ケイトは、スコットランドヤードの刑事でありながら地味でネガティブ、人付き合いが苦手ととにかくパッとしない。そんなケイトの能力を唯一正当に評価し、スコットランドヤードから地方のスカボロー署にリクルートしたケイレブ警部も、アルコール依存症を患う訳ありの警察官。それぞれに苦悩を抱えているからこそ、読者は二人に感情移入し応援したくなる。 物語は主人公のケイトを中心に、襲撃を受けたクセニアやソフィア、ケイトの友人コリンらのパートが入り混じりながら展開していく。その中でも重要なのが、オリヴァーの視点で語られる過去のパート。オリヴァーと妻のアリスは長年不妊に悩み、サーシャという子どもを養子として引き取ることになる。だがサーシャには発達の遅れがあり、そのことに二人は苦悩する。その後二人はようやく我が子を授かるものの、ノイローゼになったアリスは我が子を殺害してしまい、その罪をサーシャに擦りつける。そして少年院に収容されたサーシャはそこで凶悪な少年スレイドと知り合ってしまい、「復讐」を掲げて共謀することになる。 解説でもあるように、それぞれのパートで登場する人物同士が少しずつ繋がるとともに、読者にはわかっていることをケイトら主要人物は知らないなど、もどかしくストーリー展開していくところが特徴。真相に迫るにつれ、あまりにも非情なスレイドに恐怖と憤りを感じる。 スコットランドヤードを退職してケイレブの部下として働くことを選んだのに、頼りにならない新上司にケイトの厚意を踏み躙る犯罪被害者、相談もせず危ない橋を渡る友人に振り回されるケイトがとにかく不憫。ケイレブはケイレブで事件に関して完全なる部外者の立場に置かれてしまい、奇しくも二人が出会ったときと正反対の状況になってしまう。お互いが「もしケイレブがいてくれたら」「もしケイトだったら」と何度も煩悶する。 逆恨みで四肢麻痺にさせられその行方も杳として知れないまま終わるソフィア、誰からも愛されず利用されるだけされて殺されたサーシャ、犯罪に巻き込まれ逃げ続けてきたクセニア、そして仲間を失ったケイトとケイレブ。多くの人が傷付き、とてもではないが晴れやかとは言えない結末。それでも、このシリーズはアンソニー・ホロヴィッツやM・W・クレイヴンらに並ぶ、今一番面白い英国ミステリ(著者はドイツ人だが)
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このシリーズの安定の面白さよ! そして前回まで頑なにケイトを幸せにさせなかった著者もようやくそろそろ幸せを掴ませようという気配が。 原作はあと2作品刊行されてるようなので続きが気になります。ケイトとケイレブの関係も。ケイレブが仮に退職してもまあお互い今まで散々管轄外で行動取ってきたわけだし。 サーシャがとりあえず可哀想で。当時なんかやりようあっただろと。アリスへのフォロー含めて。今回の全ての発端はアリスの夫ですね。責任感じてるくせに少年院の訪問も2回で辞めてるしひたすら嫌なことから目を背けてるだけで結局最後まで生き残ってるという。
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相変わらずおもしろい!そして悲しい話でもあった。私が今まで読んだリンク作品の中で一番人が死んだんじゃない? ケイレブはこれからどうするんだろう。続刊の邦訳も楽しみに待ってます
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