帝国で読み解く近現代史 の商品レビュー
主に中国とイギリスを中心とした「帝国」をキーワードに、アヘン戦争以降の近現代史を概観している。 「帝国」と一口に言っても時代や地域によってその性質はさまざまである。清朝やオスマン帝国などの専制君主型は多民族を包摂し、緩やかに支配する旧来型の帝国。19世紀に登場した国民国家型は大英...
主に中国とイギリスを中心とした「帝国」をキーワードに、アヘン戦争以降の近現代史を概観している。 「帝国」と一口に言っても時代や地域によってその性質はさまざまである。清朝やオスマン帝国などの専制君主型は多民族を包摂し、緩やかに支配する旧来型の帝国。19世紀に登場した国民国家型は大英帝国をはじめとする植民地帝国。第二次世界大戦後の冷戦期における米ソ両国は皇帝が存在せず帝国主義を否定するがその行動は帝国的である。冷戦終結後、国民国家化、民主主義化の進まない現在の中国やロシアといった権威主義国家もまた帝国的である。 全体を通して、「帝国」を悪だとひとくくりに理解するのではなくそれぞれの「帝国」の歴史的背景を理解することが大切であると説いている。 個人的には、終章で君塚さんが述べている「歴史を学ぶことは、人類のその試行錯誤の歩みを知るとともに、「今、なぜ世界はこうなっているのか」を俯瞰的な視点で把握することにつながります」という一言が、歴史を学ぶことの非常に重要な目的を端的に言い表していると感じた。
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帝国を視点に、近現代史を捉える本。岡本隆司先生の本を読んだ事があったので、この本を買ってみた。 対談形式の読みやすさがあったけど、内容は多分深い(後書きにも筆者二人の自信が表れていた)。 一番新鮮だったのは、清朝が元々ウルトラチープガバメントであり、人口増大しても財政・行政規模を...
帝国を視点に、近現代史を捉える本。岡本隆司先生の本を読んだ事があったので、この本を買ってみた。 対談形式の読みやすさがあったけど、内容は多分深い(後書きにも筆者二人の自信が表れていた)。 一番新鮮だったのは、清朝が元々ウルトラチープガバメントであり、人口増大しても財政・行政規模を拡大せず、秘密結社のような中間団体が増加した結果、アヘン流通を止められなかった、という、清朝側の社会構造にも言及していた点だった。広大な領土を統治する上で、近代以前の帝国は、ある程度地方の習慣・制度を温存するしかなく、清朝の姿勢も必然だったのかもしれない(それでも、人口増加に合わせて改革を怠っていたのは、清朝政府の怠慢なのだろうが)。 国民国家が成り立つには、同じ言語・文化・歴史・習俗を共有しているという意識がなければならず、あまりにも広大な土地を持つ中国・ロシアなどでは、国民国家よりも、いわば帝国(権威主義国家)的な国家体制にならざるを得ない、というのも納得できた。 アメリカが、介入主義と孤立非干渉主義の両極端によくブレる、というのも、そう言えばそうかもしれない、と感じた。これまでも感じていた事だが、ウィルソンの世界情勢の読みが甘く、彼の妄想がずいぶん世界をかき乱したんじゃないかと、改めて思った。 多分、一度読むだけでは習得しきれてない部分も多いかもしれないが、面白く読めた。
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