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同志少女よ、敵を撃て の商品レビュー

4.3

150件のお客様レビュー

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2025/02/12

私たちは対比させることが好きだ。 討つべき敵と守るべき同志、なすべきことと許されないこと、女性であることと男性であるということでさえ。 主人公の少女は故郷を失い、戦いたいか死にたいかという究極の選択の中、復讐心を糧に戦火に身を投じていく。スリリングな戦闘描写と繊細な心理描写が、...

私たちは対比させることが好きだ。 討つべき敵と守るべき同志、なすべきことと許されないこと、女性であることと男性であるということでさえ。 主人公の少女は故郷を失い、戦いたいか死にたいかという究極の選択の中、復讐心を糧に戦火に身を投じていく。スリリングな戦闘描写と繊細な心理描写が、私たちを少女の生きる小さな世界に引き込む。 そして、その小さな世界の対比構造は、極めて曖昧なものであると私たちは気付かされる。きっと私たちが生きる現実の対比構造もそんなものなのだろう。 それら全てを乗り越えた先に少女が見たものはなにか。この小説のあらすじを見て「自分に当たる音」がしたら、絶対に読むべき一冊だ。

Posted byブクログ

2025/02/12

自分はなんのためにここへ来た。 何のために戦うか、答えろ。 ーー私は、女性を守るために戦います。 (略) 同志少女よ、敵を撃て。(538p) 本屋大賞1位コンプリートシリーズ。 本屋さんたちは、本の売り上げを伸ばすためにこの賞をつくった。デビュー作にして直木賞候補、しかしながら...

自分はなんのためにここへ来た。 何のために戦うか、答えろ。 ーー私は、女性を守るために戦います。 (略) 同志少女よ、敵を撃て。(538p) 本屋大賞1位コンプリートシリーズ。 本屋さんたちは、本の売り上げを伸ばすためにこの賞をつくった。デビュー作にして直木賞候補、しかしながら関連書籍は未だ出ていない。だから爆発的な売り上げは難しいだろう。そのような本を本屋さんが1位に推して「しまった」のは、ひとえに1か月と少し前にウクライナ戦争が始まったからだ。ロシアが、独ソ戦と見紛うような、無謀で大義のない戦争を始めてしまった。この本は、80数年前に何が起きたのか、どういう人たちが生きていたのか、何が問題だったのか、どうすれば良かったのか、多くを答えている。 本書を紐解く前に、岩波新書「独ソ戦」とアレクシェーヴィチ「戦争は女の顔をしていない」を読んでいた。どちらも本書よりもページ数は少ないが、かなりしんどい読書だった。「今回はもっとしんどくなるだろう」覚悟をしていたけど、杞憂だった。 このしんどい内容を、こう書けばエンタメになるのだ。という見事なお手本がここにある。 前2冊では、2700万人が死んだソ連内の悲惨な状況や、愛国心のみに囚われて戦争に突き進んだ少女たちが描かれていた。一方、本書のセラフィマは外交官を目指していた賢い少女であり、狙撃隊学校に入ったのも、母親と村を殺したドイツ兵と粗末に扱ったイリーナ教官に復讐することが動機だった。 状況を俯瞰的に見渡す知能と、ごく私的な動機で動いていて愛国心を持たない少女だった。つまり日本人が共感しやすいキャラになっていて、とても分かり易い。 そして場面展開があると、読者をあっという間に「現場」に連れて行く。退屈する暇がない。イワノフスカ村では、既に殲滅隊が動いていたし、スターリングラードのウラヌス作戦では、セラフィマの気付かぬ間に生死の分かれる戦場の真っ只中に連れて行かれていた。レニングラードでは、最前線に直ぐに投入された。最後の決戦の場、ケーニスブルグでは、幾つもの伏線回収がなされる。数十頁、畳み込むような描写。セラフィマのイワノフスカ村以来の課題に、決着がつく。 そのあとは、ゆったりとラストに向かう。長編小説ならではのラストの付け方であった。これがデビュー作か?ホントか? 作者は「文庫化によせて」で「この小説を書かなければよかった、と何度も本気で思いました」と冒頭に書いた(こういう読者を驚かす後書きの構成自体が既にエンタメ)。何故ならば(ウクライナ戦争が始まって)「最悪の形で同時代性を獲得し」たから。尤も、現代の戦争に対しても、ウクライナでもガザでも、大切なことは既に本書の中に書かれている。作者の後悔は描ききれなかったことがあったことではない。また、わたしももう一度「独ソ戦」を読まなくちゃいけない、アレクシェーヴィチを読まなくちゃいけない、と本気で思せて貰った。

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2025/02/12

 良かったです。独ソ戦の中、村で猟師の母をもつ女性が狙撃手になってそれからの話。  予想してたよりも残酷なシーンが多くそれがかえってこの本の魅力の一つにもなっていると思います。また、当時の歴史的背景が詳しく書かれていながらも、地図を用いて進路などもわかりやすく解説されているので読...

 良かったです。独ソ戦の中、村で猟師の母をもつ女性が狙撃手になってそれからの話。  予想してたよりも残酷なシーンが多くそれがかえってこの本の魅力の一つにもなっていると思います。また、当時の歴史的背景が詳しく書かれていながらも、地図を用いて進路などもわかりやすく解説されているので読みやすかったです。  また読み返したいです。

Posted byブクログ

2025/02/12

うーんなかなかの大作。 ようやく読み終わったー長かったー 私、カタカナ、外国物はちょっと苦手。それでも... 第5章のミハイルに会うあたりからようやくこのお話がおもしろくなってきたかな。 第6章のスピード感がすごくよくて、そこはスイスイ読めていい終わり方だったかな。 追記:でも...

うーんなかなかの大作。 ようやく読み終わったー長かったー 私、カタカナ、外国物はちょっと苦手。それでも... 第5章のミハイルに会うあたりからようやくこのお話がおもしろくなってきたかな。 第6章のスピード感がすごくよくて、そこはスイスイ読めていい終わり方だったかな。 追記:でもやっぱり...戦後あの二人があそこで生きて行くというのはなんとなくしっくり来ない。「なんでそうなった?」感は少しある。 女性兵士(狙撃兵)の話ってなかなかレアなのかな。女性視点が面白いと思った。

Posted byブクログ

2025/02/11

第二次世界大戦下のソ連の田舎町で平和に暮らしていたセラフィマが巻き込まれた運命は、戦争という残酷で無機質な世界で女狙撃兵として祖国のために、復讐のために心を壊して戦うものだった。女狙撃兵という特殊な立ち位置にスポットライトを当て、母を殺されて戦争に身を委ねる1人の生身の少女の葛藤...

第二次世界大戦下のソ連の田舎町で平和に暮らしていたセラフィマが巻き込まれた運命は、戦争という残酷で無機質な世界で女狙撃兵として祖国のために、復讐のために心を壊して戦うものだった。女狙撃兵という特殊な立ち位置にスポットライトを当て、母を殺されて戦争に身を委ねる1人の生身の少女の葛藤と成長を肌感覚で描く非常に読み応えのある一冊。個人的には、ストーリーとしても面白かったが、戦争に最適化された帰還兵が日常生活で抱える心身の不調により焦点を当てて、読んでみたかった。この帰還兵の運命というのは、非常に焦点を当てがいのあるテーマでもあると思う。ともあれ、個人的にはそこまでタイプではなかったが、本屋大賞1位に輝くのも納得の骨太な一冊。

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2025/02/10

女性が、まだ少女と呼べる年齢の子達が戦争の最前線に立ち、何人もの敵兵を葬っていく。 同テーマの著名作として『戦争は女の顔をしていない』があるが、聞き取りをもとにした実話であるそちらと違い、こちらはソ連の女性狙撃兵をモデルにしたフィクションである。少女セラフィマもイリーナも実在した...

女性が、まだ少女と呼べる年齢の子達が戦争の最前線に立ち、何人もの敵兵を葬っていく。 同テーマの著名作として『戦争は女の顔をしていない』があるが、聞き取りをもとにした実話であるそちらと違い、こちらはソ連の女性狙撃兵をモデルにしたフィクションである。少女セラフィマもイリーナも実在したわけではない。しかし彼女らのように戦地に立ち、狙撃兵という特殊な生き方に染まっていき、しかしある日突然終わった戦争に取り残され、平和な世界に戻ることができない人々は確かに存在した。 この本を書かなければよかったという著者の独白は重く、今もなお続く戦争の恐ろしさや愚かさに苦しみ、女性兵士という強いアイコンを扱うことへの慎重さと思慮深さが現れていると思った。そんな作者だからこそ、最後に描かれたセラフィマとイリーナのふたりの暮らしが陳腐なものではなく、ただ最期まで穏やかなものであればいいと、心から願えるのだと思う。

Posted byブクログ

2025/02/10

日本に住んでいると、あまり知ることがないロシア(ソ連)について知れてよかった。 スピード感がすごかった!120ページくらいまでで、普通の女の子が住んでいる村を全滅させられ、訓練学校に入り、戦地へ行く怒涛の展開。その波に乗って読みきりました。戦争下の状況がとてもリアルで読んでいて...

日本に住んでいると、あまり知ることがないロシア(ソ連)について知れてよかった。 スピード感がすごかった!120ページくらいまでで、普通の女の子が住んでいる村を全滅させられ、訓練学校に入り、戦地へ行く怒涛の展開。その波に乗って読みきりました。戦争下の状況がとてもリアルで読んでいて目を背けたくなることも多かった。その時その時の命懸けの選択に手に汗握った。 最後のエピローグが急に参考書みたいな固い感じになってしまって残念だったな。 そして、急にユリ系になってびっくり。戦時下で気がつかなかっただけなのか…。頭が追いつかない。

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2025/02/10

戦争というものに縁もゆかりもないまま元気に育ってきたので、自分の想像力の中で登場人物たちの表情や心情を創り出すのはなかなか面白かったですし、 戦争後の登場人物たちがどのように生活していっているかという部分もしっかりと描かれていて、最初は本の分厚さに圧倒されましたが楽しく読めました...

戦争というものに縁もゆかりもないまま元気に育ってきたので、自分の想像力の中で登場人物たちの表情や心情を創り出すのはなかなか面白かったですし、 戦争後の登場人物たちがどのように生活していっているかという部分もしっかりと描かれていて、最初は本の分厚さに圧倒されましたが楽しく読めました。

Posted byブクログ

2025/02/10

長編かつ戦争の話なので取っ付きにくいと思っていたが、魅力的な登場人物と臨場感のある描写に夢中になりすぐ読み終えてしまった。 またじっくり読み直したい。

Posted byブクログ

2025/02/09

元々映画鑑賞が趣味なので、まるで戦争映画を見ているような没入感に浸れる文章でした。 本当に、本を読んでいるというよりは戦争を見せられているという感覚がしました。 無慈悲に人が死んでいくところも、最後に主人公が撃たねばならぬ「敵」もなにもかも、途中読んでいて辛くて手が止まってしまっ...

元々映画鑑賞が趣味なので、まるで戦争映画を見ているような没入感に浸れる文章でした。 本当に、本を読んでいるというよりは戦争を見せられているという感覚がしました。 無慈悲に人が死んでいくところも、最後に主人公が撃たねばならぬ「敵」もなにもかも、途中読んでいて辛くて手が止まってしまって読むのに大変時間がかかってしまった。 最終章のとある一文で自然と涙が出てきました。作者さんの後書にも触れられていましたが。 戦争が世界から無くなればいいのになと強く思える素晴らしい作品でした。 時間を置いてまた読み直してみたい。

Posted byブクログ