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人生の壁 の商品レビュー

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17件のお客様レビュー

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2024/12/11

感想 今目の前にあるもの。意味が無いからと排除していいのか。無駄を省いた世界。我々は意味を見出せるのか。それは人が生きた証と言えるのか。

Posted byブクログ

2024/12/10

 世の中、どこかおかしい。そう感じている人は多い。どこがどうおかしいか、気づいている人もいる。しかし、「それはみなさんが一生懸命、そういう世の中を作ってきたからですよ」そう喝破するのが養老先生である。  たとえば、第1章「子どもの壁」では少子化について触れる。少子化の原因はいろい...

 世の中、どこかおかしい。そう感じている人は多い。どこがどうおかしいか、気づいている人もいる。しかし、「それはみなさんが一生懸命、そういう世の中を作ってきたからですよ」そう喝破するのが養老先生である。  たとえば、第1章「子どもの壁」では少子化について触れる。少子化の原因はいろいろ議論がある。税金は増えるし物価も上がる。なのに賃金は上がらない。景気が回復する見通しもない。だから子育てに消極的になる。それも正しい。けれど、多くの人が信じて疑わないのは、「自分は子どもを大切にしている」という気持ちであろう。そこが大きな勘違いだという。  子どもには子どもの時間があり、それは子どもの間にしか経験できない、かけがえのない時間である。しかし、われわれは子どもを「大人になるための準備期間」としか見ていない。早く一人前になってほしい。そういう思いで、英語やプログラミングを習わせたり、最近では投資の勉強までさせようとする。それが「子どものため」だと思っている。だが、本当にそうか。われわれ大人は、子どもが子どものままでいられる時間を奪っているのではないか。  「個性の尊重」という標語が、教育においても、あるいはそれ以外の社会生活においても、当然のように使われてきた。むろんそれらが従来の画一的な教育や、集団主義・横並びの日本社会に対する反省から生まれたものであることは言うまでもない。現代で言えば、「多様性」という言葉もそうであろう。大多数のみんなとは違う、自分だけの個性を認めてほしい。それはある意味では必然の成り行きである。しかし、さしたる個性を持たない「大多数のみんな」は、どこに自分らしさを求めればいいのだろうか。だから逆に「個性を持たなければ」というプレッシャーに悩むことになったのであろう。  やや脱線するが、むかし「木曜日の食卓」というテレビドラマがあった。どんなに忙しくても、木曜日の夕食だけは家族そろって食卓を囲む。そういうルールを決めた家族。しかし、時が流れるにつれてルールはうやむやになり、しだいに家族の心は離れていく。そんなストーリーだったと記憶している。現代ではさらに進んで、時間だけでなくメニューもバラバラになった。夫はカレー、妻はパスタ、娘はピザで、息子はカップ麺。個性の尊重と称して一生懸命やってきた結果、尊重できた個性がせいぜい食事の好み程度だとしたら、何という皮肉だろうか。  養老先生がしきりに言っているのは、2038年までに来ると言われている南海トラフ地震である。3.11のような大地震が首都を直撃すれば、現在のような考え方、暮らし方は立ち行かなくなる。そう警告する。  養老先生の本を読んでいると、なんだか村の長老の話を聞いているような気分になる。先に生まれただけでどうして偉いのか。そう怒る人がいる。でも、あなたが生まれる前から世の中は存在するし、世の中のルールもあなたが生まれる前から存在している。それを自分の思い通りにできないからって、腹を立ててもしょうがない。  養老先生が言う「自分たちがそういう世の中を作ってきた」というのは、要するにそのときの理屈で「要らない」と決めてしまったけれど、存在してきたものにはそれなりに理由があるということである。別に昔に帰れと言っているわけではない。話を聞くだけなら損をすることもないのだから。

Posted byブクログ

2024/12/08

「仕事の本質は、目の前の穴を埋めることです。穴が空いていたら、困る人がいるだろう。だから埋める。」夏目漱石が「私の個人主義」の中で、「つるはしで掘り当てるところまで進んでいかなくてはいけないでしょう」と言っていた。そして、そうすることで「生涯の安心と自信をにぎることができるように...

「仕事の本質は、目の前の穴を埋めることです。穴が空いていたら、困る人がいるだろう。だから埋める。」夏目漱石が「私の個人主義」の中で、「つるはしで掘り当てるところまで進んでいかなくてはいけないでしょう」と言っていた。そして、そうすることで「生涯の安心と自信をにぎることができるようになる」と。穴を埋めるのと掘るのとが対照的だったのでちょっと引用してみたが、中村哲さんは井戸を掘ったわけだ。自分はこの35年間、何をしてきたのだろう。まあ、自分から積極的に穴を掘って行くというよりは、穴が空いていたから埋めてきたという方が近いかも知れない。つまり、与えられた場所で、与えられた仕事を、日々わき起こる問題を処理するということに時間を費やしてきたような気がする。それでも、誰かの役に立てていたのなら幸せである。養老先生も病気をされたことで少しは人生の見方も変わってきたのかもしれない。そう感じられる部分が具体的にあったわけではないのだが、ちょっと声が小さくなってきたようには思う。文面からも。あきらめのようなものもあるのだろうか。とにかくは、大地震の後の日本をどうするかである。食料とエネルギーは自給自足ができるようにしておいた方がいいのは間違いない。それでも、自分の中では、まあどうにかなるだろう、と思ってしまっている。「明日のために」と考えるよりも「今日を精一杯生きる」ことの方に重きを置きたい。いや、精一杯ではなく気楽にかもしれない。ちょうど良い加減にがいいのだと思う。子どもたちにはずっと、将来のことを考えて、今の苦労を強いてきた。楽しいことは良いことだけれど、しんどいことを我慢できないようでは困ると考え、それを伝えてきた。今もその点は変わらない。「今を楽しく生きよう」という掛け声だけでは足りないように思う。確かに、いつ死ぬか分からないような時代には、そんなことは言えなかったのかもしれない。今はどうか。戦争の危機はどうか。震災の可能性はどうか。環境問題はどうか。悲観的に先のことを心配しながらも、楽観的に日々を過ごせればいいのだが。なんとか両立していきたいものだ。養老先生は最後に言っている。「あれこれ考えるよりも一生懸命働いたほうがいい。」「精一杯生きる。そして自分にとって居心地の良い状況を見出していく。」養老先生のことばは99%受け入れてきたのだが、最後のこのことば、ちょっとしんどいような気がする。「ほどほどでええんちゃう」と森毅に言ってほしい。

Posted byブクログ

2024/12/04

現代社会で生きる上での示唆に富む一冊であった。 養老氏の本はバカの壁以来、かなり久々に読んだ。そのときも、この人はよく人間を知っているなあと思ったものだが、本書もまたしかりであり、確かになあと頷かされたり、その観点は自分には抜け落ちていたなあとハッとさせられたりした。 むろん...

現代社会で生きる上での示唆に富む一冊であった。 養老氏の本はバカの壁以来、かなり久々に読んだ。そのときも、この人はよく人間を知っているなあと思ったものだが、本書もまたしかりであり、確かになあと頷かされたり、その観点は自分には抜け落ちていたなあとハッとさせられたりした。 むろん、あくまで養老氏の人間観、人生観、意見であり、100%鵜呑みにするものでもない。血気盛んな人にはジジイの戯言のように感じられるかもしれない。 しかしながら、現代社会を生きていて感じる「なんかおかしい世の中だな」というぼんやりしたものを取り上げて言葉にし、ここはこういう考え方もあるのではないか、と持論を展開する。よく見ておられる。心の処方箋となる。 白黒の結論を急ぎ、あっという間に一方向に転がり落ちていくような今の世の中において、ちょっと立ち止まって考えたり、目にした意見を考える、そして自分がどう健やかに生きていくか?そのためにはどのような考え方があるか?ということについて、本書を通じて重要なヒントをたくさんもらったように感じる。 人生の壁をいかに打破するか、というよりはいかにそれをうまくいなしながら、さりとて逃げることなく、健やかに生きるための自分の糧とするか…そのような、真正面からガツガツぶつかっていくタイプの本ではないので、気楽に読めます。先にも述べましたが、心や考え方の処方箋ですね。

Posted byブクログ

2024/11/24

壁シリーズの最後になるかも。 体力があるからこそ、煩わしいこともできていたのだと今さら気づきました。 もう少し力を抜いて生きていたいです。

Posted byブクログ

2024/11/22

養老先生の著書は沢山読んできました。今年肺癌になられ、闘病を経ての出稿。本当にありがたいです。本書もいつも通り、沢山の示唆を頂きました。これからも我々にアドバイスを頂戴したいです!

Posted byブクログ

2024/11/18

全力を尽くすことは大事だと思う。日々全力を尽くしていると、物事が進んで、自然と道が開けていくような気がする。コスパもタイパも大事だが、好きなことに全力を尽くしたり、日々の小さな気になることに関わったりすることも、人生を面白く豊かにするのに必要なことなのではと思った。今回も養老先生...

全力を尽くすことは大事だと思う。日々全力を尽くしていると、物事が進んで、自然と道が開けていくような気がする。コスパもタイパも大事だが、好きなことに全力を尽くしたり、日々の小さな気になることに関わったりすることも、人生を面白く豊かにするのに必要なことなのではと思った。今回も養老先生は大事なことに気づかせてくれた。毎回ありがたく思う。

Posted byブクログ