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西洋の敗北 日本と世界に何が起きるのか の商品レビュー

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9件のお客様レビュー

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2024/11/11

ウクライナ紛争の今後を予測する

発売日はアメリカ大統領選挙でトランプが勝利した日とほとんど重なったが、トッド氏は断言する。トランプが言うようにウクライナ戦争が24時間以内に終わるなどは有り得ない。ロシアが闘っている相手は「アメリカ大統領」ではなく「アメリカそのもの」であるからだ。さて、トッド氏が言う「欧州各国は...

発売日はアメリカ大統領選挙でトランプが勝利した日とほとんど重なったが、トッド氏は断言する。トランプが言うようにウクライナ戦争が24時間以内に終わるなどは有り得ない。ロシアが闘っている相手は「アメリカ大統領」ではなく「アメリカそのもの」であるからだ。さて、トッド氏が言う「欧州各国はすでに国民国家ではない」という認識は、EU官僚制が異常に膨張した事から容易に理解できる。しかし彼はアメリカも国民国家では既になくなっていると断言する。国家としての共通の価値観も喪失し、巨大な軍隊組織そのものがモンスター化しそれ自体だと述べている。これらに対してロシアは国民国家としての主権を保持している。すなわちこの戦争は「主権を喪失した西洋と国家主権を維持しているロシアとの」戦争であると規定する。もちろんトッド氏も私も、プーチン大統領の権威主義を賛美するものではない。しかし戦況が圧倒的にロシア有利であるという現実は認めなければならない。その原因をトッド氏は「アメリカの軍需産業自体の劣化」にあるという。ウクライナに十分な武器と弾薬を補充できていないアメリカの支援の枯渇が戦況悪化の原因だという。だがアメリカもすんなりと敗北を受け入れない。ロシアもそれを理解しているので最近軍事ドクトリンを大変革した。「戦術核の先制使用」を自らに許可したのだ。つまり、この戦争が際限なく拡大し人類の危機にまで達する危険性はむしろ増大している。日本も無関係ではいられない。
まだ第一章までしか読んでいない段階で、この本は驚くべき閃きと人類学的統計数字に表れた事実の重みを伝えてくれる。400ページもある割には装丁も簡素化して値段も控えめに設定されている。

奥田末治

2025/01/23

ウクライナとロシアの戦争の預言者のようにも見える。 何より面白いのは欧州がこの戦争を利用して自国をリセットしたいと言う説。一度グレートリセットという言葉が流行ったが正にそれなのかもしれません。 自分もグレートリセットしたい。

Posted byブクログ

2025/01/19

2024年度に読んだ本の中で、個人的に最高の読書体験となった。 まず、驚くべきことは、日本語版が刊行された2024年11月の時点で、世界15カ国以上(12月末で21カ国)で翻訳されているこの本(現代最高の知性のひとりであるエマニュエル・トッドの最新作!)が、なんと英語にだけは翻...

2024年度に読んだ本の中で、個人的に最高の読書体験となった。 まず、驚くべきことは、日本語版が刊行された2024年11月の時点で、世界15カ国以上(12月末で21カ国)で翻訳されているこの本(現代最高の知性のひとりであるエマニュエル・トッドの最新作!)が、なんと英語にだけは翻訳されていない、という事実である。 英米圏に籠絡されている現代社会の本質を抉るこの本を、読ませたくない人々がいるということだけでも、この本が日本語で読めることの幸せを噛みしめたい。 この本から学んだことはたくさんありすぎて書ききれない。 ディープステートのことをシャローステートと皮肉ったり、アメリカを知性もモラルも欠いた学歴だけの半インテリギャングが外交と軍事を司り、モノでなくドルだけを生産する国と喝破したり、目が覚めるような言説に溢れている。 この本の前に、ミアシャイマーの「リベラリズムという妄想」を読んで感銘を受けた私にとって、最も突き刺さったのは、ミアシャイマーが議論の前提にしていた「国民国家」が、もはや西側諸国きは存在していないという驚くべき洞察である。 この本は、近いうちに、もう一度精読をする必要があると感じている。

Posted byブクログ

2025/01/11

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO85980400Q5A110C2MY6000/

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2025/01/05

この本は日本の報道が行わない。ロシアの行動に対する考えを表しています。その他にもロシアやヨーロッパ、アメリカの文化的背景から昨今の状態を分析するなど、新しい視点を与えてくれます。日本に関する記述は8章以降によく出てきますが、その中でも文化的背景として家長制の存在が挙げられており、...

この本は日本の報道が行わない。ロシアの行動に対する考えを表しています。その他にもロシアやヨーロッパ、アメリカの文化的背景から昨今の状態を分析するなど、新しい視点を与えてくれます。日本に関する記述は8章以降によく出てきますが、その中でも文化的背景として家長制の存在が挙げられており、現在話題になっている戸籍の問題などが、すでに2023年の時点で述べられていたことが分かります。 加えて、その他ロシアに対して様々な国が好意的である背景や、日本に対するアメリカの見方などが何に基づいているのかなどに触れており、今後の地政学を検討する上でも非常に参考になります。

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2024/12/31

 この著者は常に冷静に世界情勢を分析しており、この本は現代の日本人にとって必読の書だと思う。というのも日本においてウクライナ戦争は、プーチンが狂った独裁者が時代錯誤の侵略行為を行なったものとして扱われており、ロシアは世界中の多くの国が経済封鎖に協力するので、遠からず破滅することに...

 この著者は常に冷静に世界情勢を分析しており、この本は現代の日本人にとって必読の書だと思う。というのも日本においてウクライナ戦争は、プーチンが狂った独裁者が時代錯誤の侵略行為を行なったものとして扱われており、ロシアは世界中の多くの国が経済封鎖に協力するので、遠からず破滅することになると思われている。  しかし実は世界で孤立しているのは、アメリカ中心のいわゆる西洋であり、その他の世界はロシアを支持する勢力が多数派となっているため、経済制裁は効果をあげていないのだ。そして2023年のイスラエル・ハマス間での戦闘再開によるハザ地区での住民虐殺に対するヨルダン決議案「即時かつ持続的な人道的休戦」に対しアメリカが拒否権を発動したことは、多くの国をロシア側に追いやったのだ。 なにしろこの案に反対したのは、イスラエル、アメリカとトンガやマーシャル諸島、ミクロネシア諸島等14カ国のみで、120カ国は賛成し、日本やイギリス等の西欧諸国45カ国が棄権したのだ。  我々日本人は、見たくないものは見ない、都合の悪いことは話してはいけないという言霊信仰に囚われてしまっている。だから米国の敗北や日本の財政の破綻やロシアとドイツの接近などは信じたくないため、話してはいけないことなのだ。しかし戦前の大本営発表ではないが、不吉なことは話さなけれな実現しないということではないのだ。特に世界情勢は日本人からの発信にだけに頼っていては間違うのだと思う。

Posted byブクログ

2024/12/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

本書は、西洋諸国が直面している地政学的、経済的、文化的な危機について論じたものである。筆者であるエマニュエル・トッド氏は、近代国家の構成要素として、「一つの文化」、「一つの共通言語」、「都市に集中する中流階級」の3つを挙げる。すなわち、都市に集まった中流階級者達が、一定の言語や文化に裏打ちされた「集合意識」に基づいて行動することで「国家」が成立するわけだ。ここでいう「集合意識」とは、ハラリの「サピエンス全史」風に言えば「虚構」であり、吉本隆明風に言えば、「共同幻想」である。さらにトッド氏は、近代国家の3つの構成要素の背景にはプロテスタンティズムの思想があったと指摘する。ここまでは、19世紀にマックス・ウェーバーが「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」の中ですでに指摘していることだが、それに加えてトッド氏は、近年見られる西洋諸国の衰退が「プロテスタンティズムの崩壊」に起因すると主張する。アメリカで広がるアファーマティブ・アクションを例に挙げた第8章の議論が印象的だった。プロテスタンティズムが暗黙理に前提としてきた「不平等性」と、今日広まりつつある「多様性」のような平等思考は相矛盾する思想であり、そうした矛盾を抱えるアメリカにトッド氏は、「思想面における危険な「空虚さ(=ニヒリズム)」と強迫観念として残存している「金」と「権力」」を見るという。 このように、「プロテスタンティズムの崩壊」という切り口で世界を見るトッド氏の視点は面白かった。ただし、私自身が社会科学の文献を多く読むためかもしれないが、トッド氏の文章は主張の割合が多く根拠に乏しい側面があるように感じた。また、第9章ではGDPに代表されるような数値上のアメリカ経済と実態経済のギャップを明らかにしているが、やや感情的に議論しすぎていて、論理的とはいえない内容に思えた。

Posted byブクログ

2024/11/17

西洋の敗北のフランス語版が発売された時から日本語翻訳版が出版されるのをずっと待ち侘びていました。本日通販で購入し、明日届く予定です。混沌とした世界情勢の中、これからの日本はどうなっていくのか。どのようにして生き残っていけばよいのか。トッド先生の見解が恐ろしくもあり楽しみでもありま...

西洋の敗北のフランス語版が発売された時から日本語翻訳版が出版されるのをずっと待ち侘びていました。本日通販で購入し、明日届く予定です。混沌とした世界情勢の中、これからの日本はどうなっていくのか。どのようにして生き残っていけばよいのか。トッド先生の見解が恐ろしくもあり楽しみでもあります。文藝春秋社さまのサイトで試し読みできます。大野舞先生、いつも翻訳ありがとうございます。

Posted byブクログ

2024/10/22

【米国と欧州は自滅した。 日本が強いられる「選択」は?】和平は可能でも戦争はすぐには終わらない。だが、確定しているのは、ウクライナの敗北だ。日本は敗北する「西洋」の一部なのか。

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